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[BOOKデータベースより]
自治体法務の力、未来
[日販商品データベースより]第1部 立法法務の現在地(立法目的の判断方法;委任条例の適法性に関する判例理論の検討;給与条例主義をめぐる判例理論の検討)
第2部 執行法務の現在地(自治体における行政手続法制の意義とポイント;自治体行政における先例;契約の約款となる条例)
第3部 争訟法務の現在地(審査請求実務のアカウンタビリティ向上;切れ目ない行政救済制度の条例による構築;自治体争訟法務と「固有の資格」)
第4部 自治体組織と自治体法務・行政法原論(町村総会制度の再検討;自治体法務における主体像)
本書は、自治体法務の諸テーマに関する近年の研究成果をとりまとめたものである。
序章の冒頭でも述べているが、そろそろ自治体法務の先端的研究を、未来のある次代に委ねるべきときが来ている。本書が、次代の皆さんによる新しい自治体法務・政策法務論の構築に少しでも役立ったならば、大変嬉しい。
自治体法務の力を高めるには、法務を担う人材の育成が不可欠である。筆者は、2010年代前半ころまでは、このテーマに関して、自治体職員の研修の質的充実とその中での法務研修の強化に関して思考を進めてきた。だが、それ以降の地方公務員法制における人事評価制度の変革、非正規職員の採用拡大の結果としての会計年度任用職員制度の導入など、状況が大きく変わっている。自治大学校の調査によれば、法務能力向上研修が、2015年度は調査対象が179の自治体等(都道府県、指定都市等)において255あったのに対して、2021年度は187の自治体等において86と、調査対象が増えているのに約3分の1に激減した。危機的状況が到来している。
多少明るい情報として、自治体における法曹有資格者の(任期付き)一般職職員としての採用の充実を指摘することができる(日本弁護士連合会の資料によれば、2023年1月現在、125自治体180人)。もっとも、法曹有資格者公務員の採用には地域的に著しい偏在があるし、近年はその任用数も大きく増えているわけではない。むしろ、減少傾向である。
一方、多様な人材確保という観点から自治体職員の採用試験制度が大きく改められていて一般行政職の職員でも法的知見を備えずして採用されることが常態となりつつある。大学卒の新採用職員でも、行政における法治主義すら全く知らない!というのが常態化している。これで、質の高い自治体法務を進めるのは無理だと解される。職員の研修制度における法務プログラムの充実にも限界があるから、職員が法務能力を備えさせるために、抜本的な改革施策を検討すべき段階が来ていると思われる。
さらに、執行法務を中心に、民間組織の従業員、つまり公務員の身分を持たない者が、実務を担う場面が増えている。法務人材育成の課題は、こうした執行法務を現実に担う公務員でない従事者にも関わってくるものである。
いずれにせよ、未来の人材育成を構想するときには、どのような組織とこれを担う人材が望ましいか、現状はどうかという、的確な目標設定と正確な現状把握が欠かせない。法律学の各法分野では「法における人間像」の探求が重要なテーマであり、そこで、次代が自治体法務を担うに際しても、各自が的確な自治体法務の組織像・人間像を把握して、諸議論を進めていくことが望まれるのである。(本文より)