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[BOOKデータベースより]
第1章 「民衆のシャンソニエ」ルイ・フェストーに関する一考察
第2章 19世紀フランスの歌姫ポリーヌ・ヴィアルド
第3章 街角の音楽師―19世紀を中心に
第4章 フランスの子ども歌の誕生
第5章 子ども歌と小さな虫たち
第6章 シャンソン「サクランボの実るころ」―Le temps des cerises
第7章 「シャ・ノワール」におけるシャンソンの担い手をめぐる諸問題
第8章 マルグリット・モノの「シャンソン」―「シャンソン」の成立における芸術音楽の影響をめぐって
第9章 バルバラ、父、そして母
第10章 バルバラの『ゲッティンゲン』(1965年)―歌の成立をめぐる仏独交流
第11章 シャンソンの闇鍋―対訳の試み12篇
日本においては、シャンソンの学術研究はいまだ立ち遅れていると言わざるを得ない。宝塚歌劇団のレビューやフランス映画の主題歌や挿入歌、あるいはラジオやレコードなどを通して日本に紹介されて以来、シャンソン・フランセーズは日本独自の音楽ジャンルとして発展し変容をとげたため、本来それが有していた歴史性や多様性を失い、フランスへの憧憬とともに、日本語に翻訳された歌詞(しばしば日本人の感性に合わせて大幅に書き換えられている場合もある)でうたう多くのシャンソン歌手や愛好家を生み出してはきたものの、サブカルチャーとしての側面がより際立つ結果となり、学術研究の対象とはなり得なかったからである。それゆえ20世紀以降のフランスの歌手や歌詞を紹介した書籍や雑誌などは多々見うけられるが、いずれも学術研究の水準に達しているとは言い難い。
このような状況のもと、日本におけるシャンソンの学術研究の基礎を築き発展を目指して2002年に立ち上げられたのが「シャンソン研究会」である。フランスにおけるシャンソン文化の歴史と内実を様々な角度から考察し、フランス文化史のなかに正当に位置づけ、かつ、それがどのような役割を果たしてきたのかを学際的に明らかにするため、これまでフランス文学、フランス語学、西洋史学、美学、音楽学など多彩な分野の研究者や専門家を本研究会に迎え入れてきた。
研究会設立20周年を機に、これまでの会員の優れた論考をまとめ、日本におけるシャンソンの学術研究の発展に寄与するため、日本学術振興会の研究成果公開促進費を獲得して出版されたのが本著である。ここに収められた論考は、19世紀から今日までのシャンソン・フランセーズをめぐる様々な視点からのアプローチであり、いずれも日本においてはほとんど扱われていない先駆的研究の数々である。本書は全部で11章からなっており、一定の形式上の統一を図った上で、文体については論者個々の判断に任せた。それがかえって個性豊かな論考となり、多彩なテーマとともに単調さを防ぎ読む楽しみを増しているとも言えよう。本書を通して読者諸氏が、民衆文化の花束たるシャンソン・フランセーズの魅力とその実相の一端に触れられんことを切に願うものである。
(文責編者)
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