[BOOKデータベースより]
改憲論議が盛んだ。憲法九条がその中心だが、底の浅い議論が少なくない。九条の根本義とは何か、これから日本はどうあるべきか―。強靱な思索者たる四人が、徹底的に考える。そこには九条強化論もあれば、削除論もある。結論は異なるが、いずれも、一般に流布する「護憲/改憲」の枠には収まらない、ラディカルな九条論となっている。いわゆる現実主義者によっては展望し得ない「この先」を提示する、未来構想の書!
第1章 「脱亜入欧」から「脱米入亜」へ―九条の精神と、これからの保守主義(保守思想とは何か?;「未来の他者」と保守主義 ほか)
第2章 「明後日」のことまで考える―九条強化と国連中心主義(国連はどこまで信頼できるのか?;対米自立と国連のバージョンアップ ほか)
第3章 我ら愚者の民主主義―九条削除論と戦後日本の欺瞞(正義概念の原点とは何か?;反転可能性テストとは何か? ほか)
第4章 「こうしよう」と言える日本―憲法九条と積極的中立主義(絶対平和主義としての九条;徴兵制を受け入れるか ほか)
深いところから憲法九条と戦後日本を鋭く問う。社会学者の編著者が、井上達夫、加藤典洋、中島岳志の諸氏とともにこれからを考える

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良質な知識人による刺激的な9条論。
法哲学者の井上達夫は、「9条削除論」を唱える。安全保障政策を憲法から切り離し、民主的決定に委ねると同時に、戦力濫用を防ぐための統制規範として徴兵制導入を提案する。徴兵制には政府の無責任な好戦的政策を抑止する効果があるとの立場だ。文芸評論家の加藤典洋は、自衛隊を国土防衛と国連協力の2つに分けて憲法上の組織とする「新9条論」を提起する。同時に治安出動の禁止、非核三原則、米軍基地の撤廃も憲法条項とする。保守主義を標榜する政治思想史研究者・中島岳志は、前文で絶対平和主義を掲げつつ、9条では自衛隊の存在を明記して、その権限範囲を明確に定めるべきだと主張する。そして、社会学者の大澤真幸は、絶対平和主義条項としての9条を遵守する立場を表明し、さらに国際紛争を解決するための方策として、積極的中立主義と国連改革を提案する。平和主義=護憲ではない、様々な可能性が示され、思考を深める契機となる。
レビュアー:野上由人 / リブロ / 男性 / 40代
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深いところから憲法九条と戦後日本を鋭く問う。社会学者の編著者が、根底的な議論を展開する井上達夫、加藤典洋、中島岳志の諸氏とともに「これから」を考える!