[BOOKデータベースより]
「音」を「香り」として感じる身体。それが、彼女が私に残したものだった―。仙台在住の直木賞作家が、3.11の後に初めて描く現代小説。
[日販商品データベースより]仙台在住の著者が、3.11を初めて描く現代小説
ある出来事がきっかけでピアノの音を聴くと「香り」を感じるという「共感覚」を獲得した調律師、成瀬の喪失と再生を描く連作短編。
ピアノ調律師の鳴瀬玲司は、音を聴くことによって香りを感じるという「共感覚」を獲得していた。心地よい音は、ワインのような香り、はずれた音は、生ごみのようなイヤな匂いを覚えるというものだ。その「共感覚」は、もともと色として見えていたものが、ある一件をきっかけに香りとして認識されるようになったのだ。玲司は、もともと国際コンクールで名を遺す名の知られたピアニストだったが、とある一件がきっかけで引退し、調律師として著名な妻の父が経営する事務所で、その能力をもってピアノの調律をすることで生計を立てていた。
ある日、玲司は、小学生の少女の家にピアノの調律に赴くが、その音にある違和感を感じていた。その少女の弾くピアノに、濁りを感じたからだ。気になった玲司は母親のいない時に、そのことを訊ねると、少女もまた共感覚の持ち主であると明かした。玲司にとって共感覚の持ち主と出逢ったのは二人目だ。それは、10年前に死んだ妻だった。もともと調律師だった妻は、やはり、ピアノの音を聴くことで、香りを感じることができる共感覚の持ち主だったのだ……。
妻の死をきっかけに、不思議な能力を獲得した元ピアニストが、妻の妹や友人の支え、そしてピアノの調律を通して最終的に何を獲得するのか……。愛しい人喪失と、人間性の回復を描いた大人のための連作短編小説です。
執筆中に、東日本大震災に罹災し小説を執筆することに疑問を感じた著者が、再び小説を通してどのように震災に向き合ったのかという軌跡が見事に下敷きとなった力作です。実際に主人公も震災と遭遇するシーンは、体験者ならではの壮絶かつリアルな手触りが残ります。
小説の中で引用される数々の美しい音楽の旋律と、その音に真摯に向き合う主人公の静謐な心が、だんだんと解きほぐされている様に、人という存在の強さを再確認できる小説です。
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ある出来事がきっかけでピアノの音を聴くと「香り」を感じるという「共感覚」を獲得した調律師、成瀬の喪失と再生を描く連作短編。