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[BOOKデータベースより]
カレーヒ素事件は不正な鑑定による冤罪事件だ。本書は鑑定不正の実態をわかりやすく解説する。
第1章 カレー毒物混入事件(1998年7月25日)
[日販商品データベースより]第2章 2017年和歌山地裁決定における重大な転換
第3章 亜ヒ酸は同一ではなかった
第4章 科警研鑑定と中井鑑定の関係
第5章 第2審から再審請求まで
第6章 林真須美頭髪鑑定の問題点
第7章 職権鑑定
第8章 世界の動向と裁判の問題点
(著者より)本書は、刑事裁判の鑑定書を一つひとつチェックする作業の中で見つかったゴマカシをまとめた本です。不正をあばかれた一審鑑定人たちの言い逃れや、それを擁護する裁判所の決定文を対比して引用したところ、不本意ながら裁判の滑稽さを際立たせる本になってしまいました。鑑定不正の真実を知ってほしいと思います。
1998年に起きたカレーヒ素事件。被告人は分析化学鑑定を根拠に死刑を言い渡されました。被告人の夫がシロアリ駆除業に使っていた亜ヒ酸と、事件の亜ヒ酸とが異なることを知りながら、「同一」に見せるため、濃度比を百万倍して対数を計算した図を示した鑑定書がありました。3価ヒ素(亜ヒ酸のこと)が検出できない分析方法を使って、被告人の頭髪に亜ヒ酸が高濃度に付着していることを検出したとする鑑定書もありました。2021年の現在でも分析化学的に不可能な鑑定を、二十年以上前にできたことにしていた鑑定書もありました。ゴマカシはまだまだあります。化学が苦手でも理解できるように解説しました。
「還元気化」と呼ぶヒ素鑑定法では、ヒ素が「還元されることはなく(い)」と裁判官は判示しました。還元の有無は死刑判決を左右するカギです。「還元」と呼ぶ方法なのに、還元されないという判示はスゴイ判示です。「還元」は化学用語なので説明しましたが、化学を知らなくても、裁判所の論理が破綻していることがわかります。こうしたスゴイ判示はほかにいくつもありました。判決や決定は開示されているので、出典を明記しました。
虚偽の鑑定書は、事件の被害者やそのご家族から真実を知る機会を奪いました。2021年6月には、冤罪死刑囚の娘さんと2人のお孫さんが命を落としました。鑑定不正は、事件とは無関係の人たちを二十年以上も苦しめ続け、3人の命まで奪いました。