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[日販商品データベースより]
本書は、現代日本において「宗教の公共性」とは何かを、制度や理念ではなく、苦しむ人のそばに立つ実践から問い直した一冊である。本書に収められた諸論文は、「無縁社会」論ならびに支縁のまちネットワークでの活動を契機として、私がこの十数年にわたって展開してきた3つの科学研究費(科研)プロジェクトの成果を基盤としている。それらはそれぞれに異なる時代背景をもちながらも、共通して「宗教は、どのようにして人と人とのあいだに橋を架けるのか」という問いを追い続けてきた。今振り返ってみると、これら一連の研究は、直線的な発展ではなく、螺旋のように重なり合っていることがわかる。第1段階(無縁社会における宗教の可能性を問う)では宗教の社会的実践を、第2段階(アジア的広がりの中で伴走型支援を問う)では宗教的ケアの倫理を、そして第3段階(宗教と宗教研究双方の公共性を問う)では宗教と学問の公共性を、それぞれ異なる次元で考察しようとした。結果として、それらは独立したテーマでありながら、すべてが「宗教と他者のあいだ」をめぐる探究に収束していった。本書に収めた10本の論文は、その螺旋の各点に位置している。釜ヶ崎での宗教者の語り(第T部)から始まり、ケアの理念と制度化の過程(第U部)、そして宗教と公共性の理論的再構築(第V部)へ――。それは、現場から思想へ、そして再び現場へ還るという円環的運動でもある。宗教の公共性は、抽象的な理念として存在するのではなく、苦しむ人のそばに立つ身体の中に宿る。寄り添うという行為の中で、宗教と社会、宗教と学問のあいだに小さな橋が架けられる。本書が示そうとしたのは、その橋のかけ方、あるいは橋をかけようとする人びとの姿である。日本において宗教の公共性を考えるとき、私たちは常に、社会とは異なる「世間」というもう一つの地平と向き合わざるを得ない。制度的公共(public)とは異なる、関係の網の目としての「世間」は、日本宗教の基層に流れる社会的原理である。本書最終章で扱ったこの視点は、宗教の公共性を単に政治や制度の問題としてではなく、人々のあいだに生まれる共感と気遣い、信頼と受容の構造として理解する道を開くものであった。「宗教の『公共性』を問い直す」とは、宗教の未来だけでなく、公共そのものの未来を問い直すことである。無縁社会を超える支縁のネットワーク、共苦の倫理、ケアとしての宗教、公共宗教学の構想――これらはすべて、「人はどこまで他者と共に生きられるか」という問いへのさまざまな応答である。その応答の仕方は、宗教や学問の枠を超えて、日常の対話や沈黙の中にも見出される。たとえ小さな営みであっても、そこに他者を想う心があるなら、それはすでに公共の始まりである。宗教は、その始まりを守り育てる営みとして、いま再び社会の中に静かに根を下ろそうとしている。