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[日販商品データベースより]
「私たち」の古典は消失し、ただ「私」の古典だけが残る――
そしてそのような「個人」化が進めば進むほど、今度は古典の価値それ自体を審問にかける声が静かに、そして強く「共鳴」し始めることになるのである――「古典?そんなものいったい何の役に立つんですか?」と。
なぜ古典を学ぶのか。本書はこの素朴な問いに対し、古典に潜む見えない《根源》を問うことから応答する。
古典を学ぶ意義があるのか/ないのかという論点に拙速に答えるのではなく、その問いをいったん留保し、古典を学ぶ意義が《見えない》という現象それ自体に注意を向けるところから議論を始める。対象は、前近代東アジア世界において産出された諸々のテクスト群である。なぜそれらは学ばれるべきものとされてきたのか。
古典を死んだ書物にしないために、私たちは古典にどう向き合ってゆけばよいのか。私たちは自らを縛っている言語と格闘することを決してやめてはならない。
「なぜ古典を学ぶのか」という根源的問題はいかに思考されるべきなのかをも考えていく、思索の書。
全体構成は、「開扉―古典の中の《見えないもの》」、「T 一つのものが二つに分かれるということ―万物の《根源》とは何か」、「U 生々流転する世界の中にあって絶対に変化することのないたった一つだけのもの」、「V 〈文〉の世界の脱中心的構造―《古》への回帰」、「W 象徴・引用・注釈・集成―《混沌未分》への帰還を目指して」、「X 脱人間としての〈文人〉―何ものでもないからこそ何ものにもなれる」、「Y パルマコン(薬=毒)としての古典―古典は死ななければならない」、「Z 《根源》への媒介としての〈象〉―なぜ「聖人は象を立てて以て意を尽くす」ことができるのか」、「[ 古典の中の非対称的次元差構造―象徴記号としての〈山〉」、「\ 〈古型〉としての四季―陰陽の原理を考える」、「帰結(の彼岸)―なぜ古典を学ぶのか」。
【……古典は常に社会との関係性の中でその都度自らの形を書き換え、また自らを「破壊」し「創造」することによって恒常性を保ってきたという事実も忘れてはならない。そのようにテクストを歴史化することで、歴史の偶然性や恣意性の中でたまたま「権威」を付与されたに過ぎない(のかもしれない)作品群や序列の構造を、何も考えずに「継承」してしまうような事態を未然に防ぐことができる。だからこそ、私たちは古典化の歴史的プロセスを炙り出すような歴史化の試みを不断に継続してゆかなければならないのだが、それと同時に重要なのは、そのような歴史化とは、まずもって自分自身に向けられなければならない、ということである。……】