- 生物多様性を探る 上巻
-
コケシノブの種属誌から生命系へ
ヌース教養双書
コケシノブの種属誌
- 価格
- 2,090円(本体1,900円+税)
- 発行年月
- 2025年10月
- 判型
- A5
- ISBN
- 9784902462364
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[日販商品データベースより]
米寿を過ぎてから、2冊の英文書を刊行した。ひとつは修士論文以来深く関わってきたコケシノブ科の、マレーシア植物誌のためのモノグラフ(生物の種属誌で、特定の分類群の全種を網羅し、記載した総説論文)、もうひとつは1999年に刊行した『生命系』を叩き台にして、新しく英文版に発展させた”Spherophylon”である。
コケシノブの方は、生物多様性の基礎情報構築の一端を担うもので、この専門書を今すぐ理解して読んでくれる人は、地球に現在生きている80億を超える人のうち、ほんの一握りの人々に過ぎないのだろうが、他方、100年後にも参考にしてくれる研究者がいると期待される不動の基礎資料を盛ったものである。現に、このモノグラフの先行研究は、私が敬愛するEdwin B.Copeland博士が1930年代に発表したアジア、オセアニアのコケシノブの論文群である(Copeland,1933,1937,1938)。それに対して、”Spherophylon”は、生命とは何か、自然と人間の関係性とは何かを考えようという提言で、日本的概念を地球規模に展開したいという、世界中の一般の人に読んでもらいたい書である。広く、多くの人に読んでもらうためにどうしたらいいのか、これからなんらかの行動が必要かもしれない。同じ時期に、このように一見異なった課題についての2冊の英文書を並行して刊行するに至った経緯について、それこそが私の望ましいと考える研究者の生き方の実践であると説明しようというのが本書の目的である。
コケシノブ科のモノグラフに至る、私の研究者としての生き方の紹介はそれ自体ひとつのまとまった話題となる。一方、生物の種多様性の研究を通じて生命系の概念を構築し、それが伝統的な日本人の自然観につながるものであることを知った。さらに、その概念が自然と人間の共生を生み出している実態を、地球人すべてが共有すべきだと訴える必要性を、”Spherophylon” の刊行で実現しようと試みた。この2面を統合しようとしたこの著作は大きく2つの部分で構成される。並行して進められたこの2つの試みは、自然と人間の共生を演ずる生き方の表裏をなすものであり、両面があってはじめてひとつの意味を実現するが、筋書きとしては異なった側面もあるので、便宜上、ここでは上下に分冊して刊行してもらうことにした。書籍としては、2冊に整理するのがわかりやすい取り扱いであるが、内容は両者を統合することでひとつの意味をもつことに意味がある。ひとつの書籍を上下巻2冊として刊行する意味はそこにあり、可能な限り両者に目を通していただくことを期待する。
(本文「はじめに」より)