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[日販商品データベースより]
本書のキーワードは「すき間」である。「すき間」とはなにか。それは、農学が提案するあるべき農法と風土が求める農法の「すき間」である。筆者は奈良盆地の農業を大和農法と名付けた。それを支える農学的根拠は、大和農学とでもいうべきものである。山形県の庄内農法では庄内農学のように。つまり、各地の風土農法には、対応する各地の風土農学がある。本書で明らかにするのは、これである。
第1章は、前史である。明治期からの農法論研究を丹念に見ていく。日本の農学はおもにドイツ農学の影響を受けており、「大きなすき間」があった。第2章では、加用信文を検討する。戦後農業の混迷期に、世界史の発展法則としての段階論的農法論を唱えて、西ヨーロッパをモデルとする一つの発展方向を明示した。しかし、そこには「大きなすき間」があった。加用は苦悩し格闘して、生態的農法論へと理論的に転換した。風土農学が受け継ぐべき提案であった。
第3章は、飯沼二郎である。高度経済成長のもとで、加用のモデルを批判してそこから脱却するアジア・日本農法を、風土を導入した地域類型論的農法論による農業革命論の検討を通じて提案した。風土論により「大きなすき間」は小さくなったが、静態的という限界があった。いかに風土論を動態化させるかを提案する。
第4章は、熊代幸雄による、加用の発展段階論と飯沼の地域類型論を統一しようとする比較農法論を検討する。「生命意識」「生命倫理」は、風土農学にとって貴重な視点となろう。
第5章は、筆者が長年検討してきた守田志郎である。基本法農政の破綻・減反を批判する『農業は農業である』を71年に刊行して、加用・飯沼・熊代の戦後農法論をちゃぶ台返ししてしまう。「すき間」が自覚化され西欧モデルは否定された。守田の実像を明らかにし、生産と生活が結びついた守田農法論を発展させて、風土農学へと繋げていくことをめざしている。
第6章では、椎名重明や石川三四郎を検討する。第7章では、農法論と現場の農法・農学との「すき間」を埋める努力が、日本列島内ではなく戦前の外地での農学研究でなされていたことを紹介する。
第8章では、八世紀の古風土記を検討し、それらがその後にどのように受容され展開していったのかを検討する。続いて古風土記を再興する江戸時代の地誌を紹介し、風土農学を江戸農書に探ってみる。続いて、小野武夫と黒正巖を紹介する。第9章では、明治期に著わされた牧口常三郎の『人生地理学』をとりあげる。今まで農学研究では全く検討されてこなかったが、風土農学を考えるうえでは欠かせない研究である。
最後の第10章では、こうした提案の学説史的な意味を、もう一度農学史の検討から確認する。明治期の現場の「経験」と農学士たちの「学理」はどのように農学として融け合ったのか。現場の農業者の「自負」の行方はどうなったのか。江戸農書は自前の農学ではなかったのか。そして最後に、風土農学を流れる自然観の変遷を追いながら、中国・インド・ヨーロッパからの外来思想とどのように融け合ってきたかを検討する。