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[日販商品データベースより]
全盲の彫刻家の作品をまず見たい、と詩人・谷川俊太郎は言った。その言葉に応えるように、見えなくなった彫刻家・三輪途道(みわ みちよ)は、板に粘土を盛り上げ、ひたすらイメージを広げていった。彫刻家は土着性にこだわっている。その土地の匂いを嗅ぎながら、土臭く自分自身を表す。それが彫刻家の生命線。土臭いレリーフ作品が誕生した。
木彫作家だった三輪は、目の難病で55歳の時に光を完全に失った。彫刻家にとって致命的な運命だ。絶望か?いや、三輪は何があっても彫刻家だった。彫刻刀を棚にしまい、代わりに粘土を使って自分を表現し始めた。
作品を見た詩人は「こんなイメージが湧いてきました」と、「かべとじめん」とタイトルを付けた一行詩17編を送ってきた。
・かべがかなしみを ふせいでくれる
・このかべのむこうで おおぜいがさけんでいる
・かべはきく ちかのとどろき
・じめんもかべも ときのこども
・かべにひそむのは いのちの おんど
・みえるよろこび みえないさびしさ
・みえないよろこび みえるかなしさ
・かたちはいまも うごきをゆめみる
・かべには うそがある じめんには ほんとだけ
・なんとなくうまれたかべの ふくみわらい
・じめんはほしのもの かべはひとのもの
・かべのふるさとも このほし
・かべはみのらない かべはさかない
・いろがみな しろからにじんでくるわけではない
・かべをこえて おぼろげな じめんのおわりへ
・ひとりぼっちのかべを じめんはささえる
・このかべのむこうに ちへいせんがある
この詩に、彫刻家は「受けて立つ」と、燃えた。もっともっと。足りない足りない。作品をどんどんどんどんつくった。
イメージの先にあるのは、日常の土臭い日々だ。見えていた時の記憶をたどり、犬の横顔、犬の足元、路傍の草、畑に埋まったままの大根、垣根に干してある座布団やバケツ、スリッパ、草履、上履き、母子の足元等々…
色も付けた。右のポケットに赤のクレパス、左のポケットには青。机の上にも色を順に置いた。見えていた時の記憶だけで彩色していった。40作はつくった。
この中から17点を選び、一行詩とコラボさせ詩画集ができあがった。
詩人・谷川俊太郎と、全盲の彫刻家・三輪途道(みわ みちよ)が『かべとじめん』を紡いだ。
何と素敵な詩だろうか。読むたび、その時々の心持によって見えてくる世界が違ってく