[BOOKデータベースより]
夕方に散歩をして王宮前の広場に行くと、男たちが集まって凧揚げをしていた(2014年12月。撮影:小林知)。凧は、東から西へと吹く乾季の涼しい風に乗って、薄い雲がたなびく空を高くのぼり、人々を見下ろしていた。道路脇には前月つくられたシハモニ王の即位10年記念の電飾のオブジェがあり、左右に3本ずつ国旗が立てられ、風を受けてはためいていた。
序論 カンボジアは変わったのか
カンボジアの空間と人口
第1部 政治と市民社会(民主主義を装う独裁―体制移行後のカンボジア政治展開;政府と市民が相克するメディア―カンボジアにおける表現の自由をめぐる軌跡;カンボジア市民社会―市民社会組織の誕生、増加と課題)
第2部 経済と資源(復興からの経済成長―さらなる発展を目指して;カンボジア農漁業の30年―自然資源活用・資本集約化による発展とその限界;止められない消失と維持されている影の構造―カンボジアと森林資源をめぐる30年)
第3部 社会(少子高齢化時代を迎えたカンボジアの家族・世帯;「外国人」区分と国籍に見られる継続性と変化―ベトナム人を中心に;学校教育をめぐる援助依存、国内化、多様化―国際支援下の教育復興を振り返る)
第4部 文化(カンボジア仏教の現在地と将来像―サマイの拡張・深化と新たな担い手の登場;カンボジア古典舞踊ロバム・ボラーンの継承と変容―王立芸術大学とディアスポラ民間舞踊学校の比較から;「アンコール・モデル」の成功と呪縛―体制移行後のカンボジアにおける文化遺産)
1993年、カンボジアでは内戦が終結し、統一選挙が実施されました。それから30年。国際社会が後押しした民主化の道はカンボジアの人びとに何をもたらしたのでしょうか。政治、経済、社会、文化における変化を現地経験の豊富な気鋭の研究者12名が力を込めて描き出します。