[BOOKデータベースより]
かしわばやしの、その前で、変や画かきにえり首をつかまれた清作は、「赤いしゃっぽのカンカラカンのカアン。」とどなりました。するとその画かきは、まるで咆えるような声で笑いだしていいました。「どうです、すこは林のなかをあるこうじゃありませんか。」―柏の木大王やふくろうの大将、素敵な賞品メタルも並び、はやしの中でくりひろげられる、おかしく楽しく不思議なひと時。
[日販商品データベースより]人気シリーズ「宮沢賢治の絵本シリーズ」第39弾!林の中で繰り広げられる、おかしく楽しい不思議なお話
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おひさまが山裾に落ち、野原もさびしくなった頃、だれかが調子はずれの声で「鬱金しゃっぽのカンカラカンのカアン。」とどなるのが聞こえて、畑仕事をしていた清作はびっくりして声のする方に走っていきます。すると声の主は、赤い帽子をかぶった変な男。どうやら画かきらしく、清作のえり首を捕まえ、怒ったかと思えば笑い出し、柏の木大王に招待されたから一緒に行こうと、清作を林へ誘うのでした。変な画かきの男について柏の林の中に入っていく清作。ところが、木こりの清作を木たちは嫌って、つまずかせようとしたり「せらせらせら清作、せらせらせらばあ。」と気味の悪い声でおどそうとします。清作も負けずにやりかえしながら、画かきと一緒に、柏の木大王の前へ。待ち構えていた大王と若い木々は、月がのぼると同時に自作の歌を次々歌い出すのです。画かきは一等賞から九等賞までメタルをやるといって歌合戦を盛り立て……ついにはフクロウまでもが参戦、月夜の歌合戦と大乱舞会が繰り広げられるのでした。見どころは、それぞれいわくありげで変てこな木たちの歌。清作が木たちにひやかされて怒ったり、柏の木大王との口げんかをする様子……「おれにはなぜ酒を買わんか。」「買ういわれがない。」と繰り返し言い合う場面にも笑ってしまいます。宮沢賢治の物語世界を、個性豊かな現代の画家たちが絵本にしていく「宮沢賢治の絵本シリーズ」第39弾。今作では中野真典さんが立体物を制作。それらを撮影したものが絵本になっています。場面によって、木々や画かきの服、メタルは月の銀の光を跳ね返すよう。またあるシーンでは木々は黒い影絵のよう。読者がどこまでも林の中に分け入っていかされ、まるで舞台の前に立って見ているかのような立体感です。……不意に月が霧に隠されると、舞台は消え去り「赤いしゃっぽのカンカラカンのカアン。」と響き渡るかすかな声で、おはなしの幕がおります。画家・絵本作家が持つ力を再認識させられるこのシリーズ。今作も期待を裏切りません。ただ子どもたちには、この不思議でおかしな世界とその余韻をそのまま味わってほしいのです。
(絵本ナビライター 大和田佳世)
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