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- 遠野物語 全訳注
-
- 価格
- 1,386円(本体1,260円+税)
- 発行年月
- 2023年08月
- 判型
- 文庫
- ISBN
- 9784065325315
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[BOOKデータベースより]
平地人を戦慄せしめよ/此書は現在の事実なり―高らかな挑発の言のもと、柳田はいったい何を企てたか。ザシキワラシ、オシラサマや河童たちが躍る不思議な世界を描く本書は、しかし読む者をして「叙情豊かな日本人の原風景」といった郷愁にただひたることを許さない。民俗学を創始した記念碑的作品の真価がわかる、平易な訳文と懇切な注釈の全訳注。
平地人を戦慄せしめよ
[日販商品データベースより]遠野郷は山々にて取囲まれたる平地なり
山々の奥には山人住めり
奥山に入り茸を採るとて小屋を掛け宿りてありしに
部落には必ず一戸の旧家ありてオクナイサマと云ふ神を祀る
旧家にはザシキワラシと云ふ神の住みたまふ家少なからず
ふと裏口の方より足音して来る者あるを見れば亡くなりし老女なり
村々の旧家を大同と云ふは大同元年に甲斐国より移り来たる家なればかく云ふ
早地峯より出でて東北の方宮古の海に流れ入る川を閉伊川と云ふ
遠野郷の民家の子女にして異人にさらはれて行く者年々多くあり
猿の経立御犬の経立は恐ろしきものなり
驚きて見れば猿の経立なり
死助の山にカツコ花あり遠野郷にても珍しと云ふ花なり
閉伊川の流には淵多く恐ろしき伝説少なからず
川には河童多く住めり猿ケ石川殊に多し
和野村の嘉兵衛爺雉子小屋に入りて雉子を待ちしに
山中の不思議なる家をマヨヒガと云ふ
阿倍貞任に関する伝説は此外にも多し
娘此馬を愛して夜になれば厩舎に行きて寝ね終に馬と夫婦に成れり
カクラサマの木像は遠野郷のうちに数多あり〔ほか〕
なぜ日本の民俗学は、河童やザシキワラシの話から始められたのか?
全部読まなければ、この本のすごさはわからない!
日本民俗学の創始者である柳田の原点にして代表作。
平地人を戦慄せしめよ/此書は現在の事実なり――高らかな挑発の言のもと、柳田はいったい何を企てたか。
「平地人を戦慄せしめよ」という高らかな宣言に込められたものとは何か。
「ザシキワラシ、オシラサマや河童たちが躍る不思議な世界」
「叙情豊かな日本人の原風景」
という本書がまとってきたイメージの奥にある真価とは何か?
民俗学を創始した記念碑的作品の真価がわかる、平易な訳文と懇切な解説の全訳注。
【本書「はじめに」】
『遠野物語』は、現在ではたいへん有名な本になっています。一つには、日本民俗学を創始した柳田國男の代表的な著作としてです。もう一つには、遠野の人佐々木喜き善ぜんが語った東北の村の古く豊かな生活の世界を語っている著作としてです。ザシキワラシやオシラサマや河童たち、その不思議な世界が語られており、あたかも日本の近代化の中で失われていった叙情豊かな日本人の原風景を語ってくれているもののように思われているからです。
しかし、そのようなイメージは、実はこれまで『遠野物語』を紹介してきた数多くの著作物の文章の受け売りの積み重ねの中で作られたものではないかと思われます。やはり、自分で直接、『遠野物語』の本文を読んでごらんになるのがよいと思います。すると、柳田があらたに日本民俗学という学問を創始していくその原点がわかり、そこから民俗学とはどのような視点と方法を特徴とする学問か、その独創的な面がわかってきます。
(中略)
この『遠野物語』の文章はすでに古典の域に至っており、現在の中学生や高校生にとっては難しい文章ともなっています。そこで、柳田國男のもとの文章をそこなうことのないように気をつけながら、現代口語訳の文章をそえておくことにします。
*本書は講談社学術文庫のための訳し下ろしです
*明治43(1910)6月に聚精堂から刊行された初版本を底本としています