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新視点・新資料から考える幕末明治期の漢詩と近代
汲古書院 合山林太郎
点
大沼枕山(文化15年〈1818〉?明治24年〈1891〉)は幕末・明治初期の江戸・東京において活躍した漢詩人である。枕山は、漢詩人であった大沼竹渓のもとに生まれ、菊池五山ら、江戸の大家のもとで頭角を現し、処女詩集『房山集』を刊行して以降、幕末維新期の漢詩壇を牽引した。 枕山は、とくに小説家の永井荷風との関係から特別な関心を集めてきた詩人である。荷風の外祖父は儒学者の鷲津毅堂であるが、この毅堂の祖父鷲津松隠と、枕山の父竹渓とは、同じ鷲津幽林を父とする兄弟であった。遠戚でもある枕山に対して、荷風は強い共感を示し、大正13年(1924)に枕山の半生を描いた「下谷のはなし」を雑誌『女性』に連載、後にこれを増補改稿し、『下谷叢話』(春陽堂、大正15年〈1926〉)や『改訂 下谷叢話』(冨山房、昭和14〈1939〉年)などの作品を発表した。荷風に取り上げられたことにより、枕山は、漢文学研究者からだけではなく、近代文学研究者からも注目される存在となり、様々な考察が重ねられてきた。この枕山には、研究対象として、もう一つ興味深い特徴がある。それは、彼の生涯をたどるための資料がきわめて多いという点である。著名な文人であった枕山の手になる稿本や書幅、書翰は各所に残るが、とくに、枕山の娘嘉年とその夫鶴林、彼らの娘婿である楠荘三郎をはじめとする枕山の遺族によって、大量の資料の整理と保存が行なわれてきた。近年、枕山の玄孫である大沼千早氏より、こうした大沼家に伝えられてきた資料のうち、枕山・鶴林宛の書翰などが国立国会図書館に、また、枕山・鶴林・楠荘三郎の三代にわたる書籍、稿本、書幅、印などが二松学舎大学に寄贈された。これにより、枕山と彼の子孫については、その動向が、より詳細に分かるようになった。 本書は、大沼枕山の漢詩や永井荷風の『下谷叢話』、さらには大沼家の状況や彼らを取り巻く文化や社会の動きについて考察した論考十篇と、二松学舎大学に寄贈された資料の目録によって構成されている。枕山の漢詩はどのように評価し得るのか、新たな資料は、枕山や大沼家の理解に何をもたらすのか、近年の大正期の文学研究を踏まえた場合、『下谷叢話』はどのように読み解くことができるのか、本書は、これらの問題に対して新たな知見を示し、従来の枕山研究や、漢文と近代との関係をめぐる認識に、更新をもたらそうとするものである。
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【2015年03月発売】
1位
又吉直樹
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[日販商品データベースより]
大沼枕山(文化15年〈1818〉?明治24年〈1891〉)は幕末・明治初期の江戸・東京において活躍
した漢詩人である。枕山は、漢詩人であった大沼竹渓のもとに生まれ、菊池五山ら、江戸の大家のも
とで頭角を現し、処女詩集『房山集』を刊行して以降、幕末維新期の漢詩壇を牽引した。
枕山は、とくに小説家の永井荷風との関係から特別な関心を集めてきた詩人である。荷風の外祖父
は儒学者の鷲津毅堂であるが、この毅堂の祖父鷲津松隠と、枕山の父竹渓とは、同じ鷲津幽林を父と
する兄弟であった。遠戚でもある枕山に対して、荷風は強い共感を示し、大正13年(1924)に枕山
の半生を描いた「下谷のはなし」を雑誌『女性』に連載、後にこれを増補改稿し、『下谷叢話』(春陽
堂、大正15年〈1926〉)や『改訂 下谷叢話』(冨山房、昭和14〈1939〉年)などの作品を発表し
た。荷風に取り上げられたことにより、枕山は、漢文学研究者からだけではなく、近代文学研究者か
らも注目される存在となり、様々な考察が重ねられてきた。
この枕山には、研究対象として、もう一つ興味深い特徴がある。それは、彼の生涯をたどるための
資料がきわめて多いという点である。著名な文人であった枕山の手になる稿本や書幅、書翰は各所に
残るが、とくに、枕山の娘嘉年とその夫鶴林、彼らの娘婿である楠荘三郎をはじめとする枕山の遺族
によって、大量の資料の整理と保存が行なわれてきた。近年、枕山の玄孫である大沼千早氏より、こ
うした大沼家に伝えられてきた資料のうち、枕山・鶴林宛の書翰などが国立国会図書館に、また、枕
山・鶴林・楠荘三郎の三代にわたる書籍、稿本、書幅、印などが二松学舎大学に寄贈された。これに
より、枕山と彼の子孫については、その動向が、より詳細に分かるようになった。
本書は、大沼枕山の漢詩や永井荷風の『下谷叢話』、さらには大沼家の状況や彼らを取り巻く文化
や社会の動きについて考察した論考十篇と、二松学舎大学に寄贈された資料の目録によって構成され
ている。枕山の漢詩はどのように評価し得るのか、新たな資料は、枕山や大沼家の理解に何をもたら
すのか、近年の大正期の文学研究を踏まえた場合、『下谷叢話』はどのように読み解くことができるの
か、本書は、これらの問題に対して新たな知見を示し、従来の枕山研究や、漢文と近代との関係をめ
ぐる認識に、更新をもたらそうとするものである。