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汲古書院 村山敬三
点
【序章より】(抜粋)本研究は、江戸後期の儒者藍澤南城(一七九二?一八六〇)の学問と教育について、南城が遺した著作を中心として検討することにより、それがどのようなものだったかを解明しようとするものである。南城は越後最大の私塾を経営した人物で、詩文はもちろん注釈書なども多く遺しているが、これまで江戸期の儒学史、漢文学史などにはほとんど記載されることのなかった人物である。本研究で用いる方法を以下に述べてゆく。方法の第一は、一個人の全体を研究対象とすることで、言い換えれば研究の到達点を大きく設定することである。…… 方法の第二は、第一の方法に関係するが、部分を統合するということである。もう少し詳しく言うと、考察された部分を総合した上でさらにそこに考察を加えることである。部分とは、たとえば第二章「南城の経学」における各節、つまり各注釈書の研究が部分であり、さらにまとめとして第六節「南城の経学」を設けるのは、内容を補足するという一面もあるが、第一には各節での考察を踏まえて改めて考察を加える意図からである。また、経学、詩学、教育という分野もそれぞれが部分である。この部分もまた統合の必要がある。…… 方法の第三は、歴史の上に立った考察である。本研究が、最初に江戸期折衷派の検討から始めるのはその一つの試みである。どのような儒者であっても前代からの影響を受けない者はいない。また、南城が生きた時代の状況がどのようであったかを知ることはどのような分野の研究を行うについても必須のことである。さらに後代にむけて南城の仕事がどのような意義を持つかという視点も重要である。方法の第四は、特徴となるものを探すこととその意味を問うことである。特徴が既に現れているのであれば、その意味を問うことになる。たとえば、南城の一つの特徴は地方儒者であったことである。経書の注釈、二千に近い詩、三余堂の教育、それらは詩の一部を除いてすべて柏?南条の地においてなされた。南城にとって、地方に住んだことの利点はあったのか。南城はなぜ地方の片田舎に塾を開いたのか。たとえばそのような問いをもって考察を深めるのである。以上が本研究における主要な方法であるが、さらに付言しておきたいことがある。それは、既存の資料だけに頼らず新しい資料を蒐集し、また現地調査による考察も加えてゆくことである。これは主に教育の分野についてのことになる。これまで知られていなかった史料の存在に注意することや、地域の人から三余堂に関係した話を聞いたり、門人の家を訪ねたりすることなどによって考察を深めてゆくのである。その量と得られる成果から言えばわずかなものになるかもしれないが、本研究で重視したい方法である。
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[日販商品データベースより]
【序章より】(抜粋)
本研究は、江戸後期の儒者藍澤南城(一七九二?一八六〇)の学問と教育について、南城が遺した著
作を中心として検討することにより、それがどのようなものだったかを解明しようとするものである。
南城は越後最大の私塾を経営した人物で、詩文はもちろん注釈書なども多く遺しているが、これまで江
戸期の儒学史、漢文学史などにはほとんど記載されることのなかった人物である。本研究で用いる方法
を以下に述べてゆく。
方法の第一は、一個人の全体を研究対象とすることで、言い換えれば研究の到達点を大きく設定する
ことである。……
方法の第二は、第一の方法に関係するが、部分を統合するということである。もう少し詳しく言うと、
考察された部分を総合した上でさらにそこに考察を加えることである。部分とは、たとえば第二章「南
城の経学」における各節、つまり各注釈書の研究が部分であり、さらにまとめとして第六節「南城の経学」
を設けるのは、内容を補足するという一面もあるが、第一には各節での考察を踏まえて改めて考察を加
える意図からである。また、経学、詩学、教育という分野もそれぞれが部分である。この部分もまた統
合の必要がある。……
方法の第三は、歴史の上に立った考察である。本研究が、最初に江戸期折衷派の検討から始めるのは
その一つの試みである。どのような儒者であっても前代からの影響を受けない者はいない。また、南城
が生きた時代の状況がどのようであったかを知ることはどのような分野の研究を行うについても必須の
ことである。さらに後代にむけて南城の仕事がどのような意義を持つかという視点も重要である。
方法の第四は、特徴となるものを探すこととその意味を問うことである。特徴が既に現れているので
あれば、その意味を問うことになる。たとえば、南城の一つの特徴は地方儒者であったことである。経
書の注釈、二千に近い詩、三余堂の教育、それらは詩の一部を除いてすべて柏?南条の地においてなさ
れた。南城にとって、地方に住んだことの利点はあったのか。南城はなぜ地方の片田舎に塾を開いたのか。
たとえばそのような問いをもって考察を深めるのである。
以上が本研究における主要な方法であるが、さらに付言しておきたいことがある。それは、既存の資
料だけに頼らず新しい資料を蒐集し、また現地調査による考察も加えてゆくことである。これは主に教
育の分野についてのことになる。これまで知られていなかった史料の存在に注意することや、地域の人
から三余堂に関係した話を聞いたり、門人の家を訪ねたりすることなどによって考察を深めてゆくので
ある。その量と得られる成果から言えばわずかなものになるかもしれないが、本研究で重視したい方法
である。