第一次・第二次世界大戦間期の建築家たちによるユートピアへの希求とその帰結について、本書では運動の中心地であったヨーロッパにおける事例ではなく、アメリカ合衆国におけるひとつの展開に着目する。すなわち、一九三〇年代初頭のニューヨークにあらわれた「構造研究会(Structural Study Associates, SSA)」を名乗るバックミンスター・フラー率いる建築家集団と、彼らを取り巻く人々とのあいだでの議論の諸相である。大恐慌という資本主義社会の危機のさなかに活動を開始したこの団体は、産業化に立脚点をおいた建築観を背景として、大恐慌という「緊急事態(emergency)」をユートピアの「発生(emergence)」の契機へと転じるような、建築、都市、そして社会全体にわたる変革構想を提示していた。"
[BOOKデータベースより]
資本主義のもたらす病弊が治癒された理想社会=ユートピアの実現へ向けて。一九三二年当時、危機の頂点にあった大恐慌という「緊急事態」を前にしてバックミンスター・フラー率いるSSAが提示した社会変革の構想とは。
見えない団体
[日販商品データベースより]1 産業化・コミュニティ・美学―近代建築の三つの立脚点(摩天楼の都市と建築家の疎外―アメリカ建築界の状況と課題;産業化とコミュニティ―建築雑誌の変容と近代建築をめぐる二つの立場;「インターナショナル・スタイル」を定義する―MoMA「近代建築」展への道のり)
2 エマージェンシーからエマージェンスへ―転換点としての一九三二年(「インターナショナル・スタイル」への迎撃―SSAの建築思想;大恐慌と「産業共産主義」―SSAの社会変革構想)
3 シェルターか、革命か?―ニューディール期における分岐と相克(SSAからFAECTへ―建築家と労働組合運動;モビリティのユートピア―「移動住宅」をめぐる構想と論争;産業化の二つの戦線―建築生産の理論化とユートピアの行方)
反復される問い
"一九三〇年代、大恐慌下のアメリカ。フラー率いる建築家集団SSAから発生した建築と社会の変革をめぐる活発な議論を、現代から参照する
第一次・第二次世界大戦間期の建築家たちによるユートピアへの希求とその帰結について、本書では運動の中心地であったヨーロッパにおける事例ではなく、アメリカ合衆国におけるひとつの展開に着目する。すなわち、一九三〇年代初頭のニューヨークにあらわれた「構造研究会(Structural Study Associates, SSA)」を名乗るバックミンスター・フラー率いる建築家集団と、彼らを取り巻く人々とのあいだでの議論の諸相である。大恐慌という資本主義社会の危機のさなかに活動を開始したこの団体は、産業化に立脚点をおいた建築観を背景として、大恐慌という「緊急事態(emergency)」をユートピアの「発生(emergence)」の契機へと転じるような、建築、都市、そして社会全体にわたる変革構想を提示していた。"