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準市場化された日本の介護保険サービスは期待された役割を果たしたのか。営利法人と非営利法人のサービスの質の相違、利益拡大と効率化のメリットとデメリット、介護職員が理想とするケアと利用者への公平性の保持など。市民社会に与えてきた影響を検証する。
序章 公共サービスの大競争時代
第1章 介護保険サービス市場と様々な参入事業者の現状
第2章 介護保険サービス市場における非営利事業者のシェア
第3章 準市場・訪問介護サービスにおける非営利・営利事業者の行動比較―訪問介護事業所の場合
第4章 準市場における非営利・営利事業者の比較―グループホームの場合(単純集計結果から)
第5章 介護保険サービス市場における経営主体別事業者のパフォーマンス―質の相違とクリームスキミングに関する実証分析
第6章 介護保険サービス事業の効率性と効果性―規模の効果・範囲の効果を中心に
第7章 介護保険制度と市民社会―介護系NPOのプレゼンス
第8章 介護保険サービス市場の展望
利用者、提供者にとって良質なサービスの維持には何が必要なのだろうか。2000(平成12)年4月に施行さた介護保険制度には準市場が取り入れられ、効率的に質の高い介護サービスを供給することを目的に、公的、非営利、営利の多様な事業者が参入して競争することとなった。本書は20年以上を経た日本の介護保険サービス事業の導入から最近までの非営利組織と営利組織の行動を分析し示したものである。利用者にとって良い介護サービスとは、何を指標に比較し判断できるのか。地域差のある市場、経営主体別にみたとき、営利法人と単一カテゴリーとして扱うことが難しい非営利法人のサービスの質にはどのような差と要因があるのか。また、事業者のクリームスキミング志向の行動は起きているのか。利用者数に影響する要因は何か。複数の要因とサービスの質との関連性を明らかにし、効率化のメリットとデメリット、介護サービス市場の展望を示した。事業者の利益拡大のなかで利用者への公平性・公正性を保ち、サービスの質を落とさないために、また、介護職員の労働環境を守ることの意義も分析している。介護保険制度という公共サービスにおいて、非営利組織と営利組織が競争するという仕組みがどのように機能してきたのか、現場が参考にすべき研究成果である。