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[BOOKデータベースより]
「全く国文の修養をおこたれる十数年前においてよくもかかる雅致の文をなししか」と上田敏を驚嘆させた明治の文語訳聖書(元訳)の訳文は、原文に忠実な訳を目指す力と聖典に相応しい文体を目指す力とが調和した名訳である。本書は、文語訳は漢訳の書き下し文にすぎないとする通説を否定し、独自の和漢混交文体に外国語の翻訳によって生まれた表現などを取り込んだ、新しい文体によって書かれたものであることを明らかにする。
前篇 訳文の研究(ヘボン訳福音書の成立;委員会訳新約全書の成立;委員会訳旧約全書の成立;ヘボン訳「箴言」の初訳と改訳―委員会訳の用字・用語・文体)
[日販商品データベースより]後篇 訳語の研究(「愛」―「雅歌」の用例から;「聖霊」と「霊魂」;「栄光」)
付論 奥野昌綱訳『真理易知』について
明治期の委員会訳聖書(元訳)は聖典の翻訳であるとともに西洋文学の紹介という側面を持っていた。「雅ともつかず俗ともつかず、一種特異の文章」で紹介された聖書の内容は日本文学に大きな影響を与え、その文章は近代的文体の基となった。聖書の日本語訳で今も輝きを放っているのは文語訳であり、聖句は文語の形で日本語の中に生きている。本書は明治の文語訳聖書がどのように成立したかを具体的な分析を通して明らかにする。