- 野蛮への恐怖、文明への怨念
-
「文明の衝突」論を超えて「文化の出会い」を考える
La Peur des barbares:Auーdela du choc des cibilisations- 価格
- 3,850円(本体3,500円+税)
- 発行年月
- 2020年08月
- 判型
- A5
- ISBN
- 9784794811547
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[BOOKデータベースより]
人類が取るべき共存の形式とは何か。あらゆる暴力の源泉にある「人間的なもの」。他者性排斥と善悪二元論に打ち克つための、万人に求められる思考実践。
序 恐怖と怨念のあいだで
[日販商品データベースより]第1章 野蛮と文明(野蛮であること;文明化されているということ ほか)
第2章 集団的アイデンティティ(文化の複数性;構築されたものとしての文化 ほか)
第3章 諸世界間の戦争(戦争する、それとも愛し合う?;宗教戦争と政治的紛争 ほか)
第4章 暗礁のはざまをすり抜ける(アムステルダムにおける殺人;反イスラム闘争 ほか)
第5章 ヨーロッパのアイデンティティ(アイデンティティを求めて;一体性の基礎としての複数性 ほか)
結 善悪二元論を超えて
今日、世界中の人間の往来がますます頻繁になり、生まれ育った場所を去り、そもそも自分の生まれ育った土地ではない国に、しかも自分と言語・文化を異にする人々の住む地域に生活しにいく人々がどんどん増加している。しかしそれと並行して、それぞれの国において、もともとそこに居住していた人々と新しくその社会に入ってくる人々との軋轢が激しくなりつつあり、その軋轢が思いもかけない形で爆発することもある。
二度の世界大戦の発火点となったヨーロッパでは、大戦の惨禍によるトラウマが大きな力となり、ヨーロッパ連合が結成されるに至り、長年ヨーロッパ世界において対立を続けていた独仏を中心として、互いの間で武力を発動して争うことのない空間を生み出したが、今度はヨーロッパにその外部から押し寄せる人々とそもそものヨーロッパ人との間の軋轢が大きな問題となっている。
その軋轢は、新しくヨーロッパにやってきた人々がイスラム文化圏出身者であることによって、ヨーロッパ人にとっては、異文化圏出身の「野蛮人たち」に自らの文化が脅かされるような恐怖を抱かせ、それが移民排斥、イスラム排斥の感情を呼び起こし、近年ヨーロッパ各国で観察される右翼ポピュリズム政党の勃興の背景になっている。
こうした状況は日本にも無縁のものではない。新たに日本社会にやってくる人々を、自分たちと同様の人間と認めつつ、社会のなかで共生する術を学ぶことは今後の日本にとっても喫緊の課題と考えねばならない。
故国ブルガリアからフランスに移住し、「異郷に生きる人」の眼差しでフランス社会を見つめ続け、「文化の出会い」「自己と他者」の問題について生涯考え続けたトドロフによる本書は、こうした新たな状況を生きるわれわれにとっても大きな指針となってくれるだろう。(おおたに・なおふみ/おの・うしお 共にフランス文学)