[BOOKデータベースより]
伊勢物語は、長期間にわたり複数人の手によって作られた結果、現在の姿となった。既存部分の読解にもとづく新たな章段の増補や、既存章段の改変をくりかえしてきた物語の本質を探るため、「文体・内容」と、「享受史・注釈史」という二種の要素を用いて読解の歴史的変遷を辿る。
第1章 文体と方法(「昔」と「今」―伊勢物語の文体;「かの」―伊勢物語の遠近法;伊勢物語における散文と和歌―連接形式の意味 ほか)
第2章 主題と人物像(伊勢物語の悪女;右近の馬場の恋―九十九段を考える;「人しれぬ」と「心やむ」―五段の人物造形 ほか)
第3章 享受史の中の伊勢物語(古注の世界―物語注釈としての説話;ふたつの「芥川」―室町中期伊勢物語注釈の虚構理解;伊勢物語の「誹諧」―宗祇の注記をめぐって ほか)
変わり続ける物語の真の姿とは。
伊勢物語は、長期間にわたり複数人の手によって作られた結果、現在の姿となった。既存部分の読解にもとづく新たな章段の増補や、既存章段の改変をくりかえしてきた物語の本質を探るため、「文体・内容」と、「享受史・注釈史」という二種の要素を用いて読解の歴史的変遷を辿る。2001年刊の名著、待望の復刊。
【……現在の私たちが伊勢物語を読む、その読み方も、これまで重ねられてきた読解の変遷の歴史と、けっして無関係ではない。一方ではこれまでの読解の歴史を受け継ぎながら、また一方では、現代という時代の文学観・世界観に無意識のうちに影響されつつ、私たちは伊勢物語を読んでいる。……伊勢物語について真剣に考えようとするなら、私たちはまず、私たち自身のそのような読解のあり方について自覚的になるとともに、これまでの伊勢物語読解の変遷の歴史を十分に知ることによって、すべての読みをいったん相対化し、できるかぎり自由な立場からあらためて率直に、そして根本的に、伊勢物語の本質を捉え直してゆかねばならない。】……「はじめに」より
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