[BOOKデータベースより]
あの日、私は「男」であることを放棄した。小学館ノンフィクション大賞選考会を紛糾させた問題作。
序章 惰性で生きるには、長すぎる
第1章 無邪気か無垢か、はたまた無知か
第2章 感情の氾濫は、現状への反乱だったのかもしれない
第3章 自覚からの向上心は、試行錯誤と名乗る迷走なのだろうか
第4章 解決策のない事象に対する、決着の理論
第5章 存在の確認は、過去と未来の在り方を証明する
第6章 それでも、ハッピー量産体制
小学館ノンフィクション大賞紛糾の問題作!
2015年3月9日、当時36才。私は、男性器を摘出した。
「女になった」と言わない理由は、この選択が女性になるためじゃなく、自分になるためのものだったから。だから私は、豊胸も造膣もしないことを選んだ。
「性同一性障害」という言葉が浸透して、「性はグラデーション。この世は単純に男と女には分けられない」と多くの人が理解する時代にはなったかもしれない。けれども私は自分の性別を、男にも、女にも、二つのグラデーションの中にも見つけることができなかった。
男であれず、女になれない。
セクシャリティが原因でイジメにあったことはない。事実はその逆でみんな優しかった。でも、男子クラスになったことを機会に私は高校を中退した。
女性を愛する男性に命がけの恋をして、葛藤し、苦悩して、半死半生の状態に陥ったこともあった。ひたすらに自己否定を繰り返したりもしたけれど、周囲の誰もが私を一生懸命に支えてくれた。
そして社会人である今、多くの人が愛情と親しみを込めて私を「しんぺいちゃん」と呼ぶ。
これは、人生に同性も異性も見つけることができなかった一人の人間が、自らの“性”を探し続ける、ある種の冒険記です。
【編集担当からのおすすめ情報】
第23回小学館ノンフィクション大賞に、まさかの「自分自身を取材したノンフィクション」が送られてきました。
選考会では、「これはノンフィクションといえるのか」「第三者への取材を行なうべきではないか」など、さまざまな意見がでましたが、選考委員の感想に共通したのはただひとつ。
「それでも、この作品は面白い」
小学館ノンフィクション大賞を紛糾させた異例の”自伝的ノンフィクション”は、「性自認」だけが話題の中心ではありません。
どうしてもその道を選ばざるをえない、多くの「マイノリティ」の心の支えとなるはずです。
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ユーザーレビュー (1件、平均スコア:3)
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★プロ書店員レビュー★
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大雑把かつ強制的な性カテゴリーの暴力性について。
男性であることへの違和感がひときわ強く、しかし女性になりたいわけではない。同性愛とも性同一性障害とも違う。著者は、率直に言語化されたタイトルそのままの身体を敢えて選択した。男性器を摘出するも女性器は形成しない。決して容易な処置ではなかった様子も記録されている。衝撃的な内容だ。誰しも「男」「女」という大雑把かつ強制的な性カテゴリーへの違和感には、多少経験があるだろう。私自身「俺」「僕」という一人称には抵抗があり「私」しか使わない。あるいは男性ばかりが集まると途端に始まる猥談も苦手だ。とはいえ著者の困難を想像できるか。過激な結論には批判もありうる。ただ、身体を改造しなければ生きられない程に、この社会の性観念が強固であるなら、他人事ではない。結局この衝撃は、社会の問題を社会の側ではなく個人の側で解決しなければならない苛酷な現実それ自体の、息苦しさによるところが大きい。
レビュアー:野上由人 / リブロ / 男性 / 40代
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