[BOOKデータベースより]
第1章 ゲノム系計算科学とは?
第2章 進化の大事件を考える
第3章 生物の多様性を生み出す遺伝子変異
第4章 膜タンパク質の分類・予測
第5章 電荷28残基周期性の謎
第6章 活性部位の量子力学計算
第7章 生体分子のつくるシステム
第8章 生物に対する誤解のまとめ
これまでゲノム関係のバイオインフォマティクスの書籍は多く出版されているが,「ゲノムは全体として何を書きこんでいるのか?」という疑問に対する考察は十分なされてこなかった。生物の設計図であるゲノムには情報的側面と物理的側面の2つの面があるのだが,今までは情報的側面に注目しすぎていたからである。本書では,ゲノムには物理的実体があるということに注目し,配列の物性分布の解析を中心として解説をしている。これまで類書はなく,ゲノム情報解析に関する世界的に見ても非常に独創的な書籍となっている。
生物は,一次元の配列情報で設計され,三次元の生物体が実現されるという,実に複雑な構造を持った物質(物体)である。しかも,生物の配列情報はランダムな遺伝子変異の集積だけで進化してきたということがわかっている。本書では,この不思議な生物進化が,3つの概念で説明できることを示している。
(1) 配列情報に対する遺伝子変異は,的のあるランダム過程によって駆動されている。
(2) 生物体を作るタンパク質の構造は,配列の物性分布の粗視化によって大枠が決められている。
(3) 生物ゲノムの中の遺伝子集団は,すでに遺伝子変異の平衡分布に到達している。
これらの概念は,いくつかの計算科学的研究によって裏打ちされており,本書の各章で解説されている。
生物科学の将来を指し示す書籍として,生物系の学生,研究者に本書をぜひ読んでもらいたいと思う。
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ゲノム系計算科学における中心的な疑問に対して、新しい科学的切り口を紐解く1冊。