[BOOKデータベースより]
中里恒子の筆でよみがえる小さきもの、忘れられがちなものの煌めき。時代と一線を画しながら学びを極め自然を愛惜した野上彌生子の人生の充実。
中里恒子1 日々の楽しみ
中里恒子2 旧友たち
中里恒子3 本と執筆
中里恒子4 おんならしさ
野上彌生子1 山荘暮らし
野上彌生子2 作家の思い出
野上彌生子3 同時代人へ
野上彌生子4 山姥独りごと
女性作家の名随筆のアンソロジー、第10巻は昭和を代表する女性作家である中里恒子と野上彌生子。選者・小池真理子氏は「時雨の記」で中里文学に惚れ込んだ。今回全随筆を読み「思った通りの人だった」と言っている。あまり出歩かず、家事や園芸にいそしみ読書と数少ない友人との深い交わりを愛しんだ作家の随筆は、読めば読むほど豊かな心持になれる。野上彌生子は軽井沢の山荘での独居を好んだ、というところに小池氏は親近感を持ったという。焦らず弛まず大器晩成の文学者人生を歩んだ人、というイメージの作家だが、小池氏のお薦めは小品「カナリヤ」。戦時下の乏しい食糧事情のなか、よれよれのカナリヤをひきとって育てる話だ。この巻で、今は作品入手のしにくい二人の女性作家の、美しい日本語と深い教養に裏打ちされた思索、暮らしの愉しみ方をぜひ味わってほしい。