[BOOKデータベースより]
日本には、中国ではいつのまにか廃れてしまった「中国」があると、著者は説く。漢字、着物、端午の節句などの行事等々。しかしそれらの「中国」は、どこか姿を変えた不思議な「中国」なのだ。そして茶の湯に親しむなかで著者は、名物茶碗や国宝茶碗の多くが中国から渡来した唐物で、しかも中国には残されていないことに気づく。なぜ日本人は唐物を自らの“国宝”としたのか。なぜそれらの優品が中国には残っていないのか。中国と日本の間に横たわる広くて深い文化的差異の大海に漕ぎ出した、まったく新しい日中比較文化論の誕生である。
第1章 青磁茶碗の謎(中国青磁の原点、越州窯青磁がやってきた;茶人に重宝された「砧青磁」;「珠光青磁」と侘び;青磁茶碗の名付けと格付け)
第2章 天目茶碗の謎(日本人はそれを「曜変天目」と名付けた;玳皮天目の運命;油滴天目と禾目天目の流転)
第3章 祥瑞茶碗の謎(祥瑞の誕生;五良大甫と祥瑞の不可思議な関係)
第4章 龍文の謎(龍はいかなる存在か;陶磁器における龍文の日中比較)
若き中国人研究者が読みとく日本文化の死角
新進気鋭の中国人研究者による、斬新な日本文化論。四川省出身の著者・彭丹氏は、四川大学で日本文学を学び、中国西南航空公司勤務を経て日本留学。中国の航空会社に勤務した後、日本に留学。現在は法政大学講師。来日以来、疑問に思ってきたことは、中国では廃れた文化が日本に残っていることだった。それを最も意識したのが、茶の湯の茶道具であった。茶の湯で珍重される茶碗のほとんどが唐物(中国製)で、しかも国宝茶碗もほとんどが唐物である。日本の国宝であるはずなのに。しかも不思議なことには、産地・中国にはそれらの茶碗は何ひとつ残っていないのだ。なぜ日本の茶人は唐物を珍重したのか。なぜそれらが中国に残っていないのか。そこに見え隠れする、「借用」と「創造」という、日本文化の本質。それを解きあかしていくのが、本書である。日本人だからこそ気づかない、日本文化に潜む中国文化の影。中国人の視点から、茶の湯、そして国宝という、日本文化の美意識の聖域に踏み込んだ、まったく新しい比較文化論の誕生である。
【編集担当からのおすすめ情報】
日本文化とは何か、日本人はどういう民族か、といったことに興味ある方なら、陶磁のことがわからなくても思わずうなずきながら読んでしまう、目からウロコの日本文化論です。とても読みやすく、中国人とは思えぬほどの日本語文章のうまさにも脱帽です。
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