- ぶどう酒びんのふしぎな旅
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講談社
藤城清治 ハンス・クリスチャン・アンデルセン 町田仁- 価格
- 3,143円(本体2,857円+税)
- 発行年月
- 2010年04月
- 判型
- B4
- ISBN
- 9784061324244
[BOOKデータベースより]
光と影に人生の万感をこめ、藤城清治、原点への挑戦。初めての絵本として選んだアンデルセンの名作を、86歳にして、新たに描き下ろす渾身の作品。
[日販商品データベースより]ブラチスラバ国際絵本原画コンクール「金のりんご賞」受賞作家で、日本を代表する影絵作家、藤城清治氏。本作は、氏が最初の絵本として選び、愛してやまないアンデルセンの名作を、新たに渾身の力をこめて描き上げた絵本です。
昭和25年、暮しの手帖社から刊行された旧版『ぶどう酒びんのふしぎな旅』はモノクロ印刷。これでは十分に表現できなかった幻想世界を、オール4色で完全に表現したいという藤城氏の宿願を果たすものであり、ご自身の原点への挑戦でもあります。
本年4月に、86歳になる藤城清冶氏の創作意欲は、衰えるどころか旺盛さを増しています。本書には、昨年大きな話題となった京都府京都文化博物館での「藤城清冶 光と影の世界展」で展示され、人気を集めた作品も掲載されていますが、ほとんどは新規の描き下ろし。作品に手を入れ続けている姿は、妥協を知らない真のアーティストの名にふさわしいものです。
藤城氏の86歳の誕生日にあわせて刊行します。
あらすじ
あばら屋の二階の窓辺に、老婆の飼い鳥の水飲み用に置かれた、こわれたぶどう酒びん。じつは、このびん、老婆が、美しい少女だったころ、その婚約の席で空けられた、ぶどう酒びんだった……。使われては、捨てられ、また拾われて、べつの人の手に渡りというぶどう酒びんの旅が、ときに少女の人生と交錯していく。アンデルセンの名作を絵本化。
藤城 清治(1924年4月17日 生まれ )
日本を代表する影絵作家。東京都出身。慶應義塾大学経済学部卒業後、人形劇と影絵の劇場「ジュヌ・パントル」を結成。(後年、「木馬座」と名称変更。)1956年、影絵劇「銀河鉄道の夜」にて、1956年度国際演劇参加読売児童演劇祭奨励賞、日本ユネスコ協会連盟賞を受賞。 1983年、絵本「銀河鉄道の夜」でチェコスロバキアの国際絵本原画展BIBの金のりんご賞受賞。1989年に紫綬褒章、1995年に勲四等旭日小綬章を受章。 1999年、日本児童文芸家協会より児童文化特別功労賞受賞。
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藤城清治さん86歳の最新作は、初めて絵本として選んだアンデルセンの名作「ぶどう酒びんのふしぎな旅」を、新たにカラーの影絵として描き下ろされた渾身の作品。まさに原点への挑戦です。 今はコルクの栓のついたビンのかけらとなって、鳥の水のみ代わりとなっているぶどう酒びんが、波乱に満ちた自らの半生を語りだすところから物語は始まります。上等なぶどう酒びんとして生まれ、ある毛皮商人の家に買い取られ、若くて美しいお嬢さんの喜びの瞬間に居合わせます。そして、そのまま空高くほうり投げられたびんの長くてふしぎな旅が始まるのです・・・。 人生の喜びと悲しみとはかなさが描かれたそれぞれの場面が、読む者の心に強く印象に残っていくのは、言うまでもなく60枚にも及ぶ叙情溢れる繊細で美しい影絵の効果。思い入れのあるこの物語を、藤城清治さんは絵本デビューから60年目にあたる86歳の誕生日を目標に、2、3年前から取り掛かられてきたのだそうです。そんな表現者としての藤城さんの人生と、この古いぶどう酒びんの物語との不思議な重なり。多くの説明がなくとも、読むものの心にその深みと感動が差し迫ってくるようです。その迫力は、子どもはもちろん、多くの大人の心を揺さぶり、そして力づけてくれる事は間違いありません。
(絵本ナビ編集長 磯崎園子)
アンデルセンのお話も素晴らしいのですが、見返すたびに藤城さんの影絵にウットリしてしまいます。
ワインでいえば芳醇なブルゴーニュの赤。
しかもワイナリーでかなりの年月寝かされて熟成した極みを感じました。
多分あとがきにもあるように、藤城さんの思いが、ここまでの精度と味わいを深め、集大成の形でリメイクされた渾身の作品だからでしょう。
話はワインボトルの数奇な旅と、ワインボトルが出会ってきた人々と冒険。
しあわせな二人が1年後の結婚式を約束したのですが、男性が航海に出た先で遭難してしまいます。
恋人は許嫁への手紙を空のワインボトルに託します。
ワインボトルは二人のしあわせの絶頂から、長い年月の後に年老いた彼女との再会までの旅を語ります。
ワインボトルは出会ったこと見たものをただ受け入れただ見届けるだけ。
いくつかの悲しみがさりげなく即物的に語られます。
話に紆余曲折があるので、何度読み返しても飽きません。
そのくせお気に入りの映画のように、感動の中にすっかり引きこまれてしまいます。
そして藤城さんの絵。
黒の凛々しさと、彩色をほどこした背景の調和がたまりません。
あるときはスケールの大きな絵画のように、あるときは話を浮かび上がらせる黒子のように、そして動画のように…、絵本の一部であるのが申し訳ないように満ち溢れています。
ワインボトルの中にいろいろな思い出を浮かび上がらせ、表現もくっきりしていたり、ぼやかしたり、心の中で香りが拡がって行くように思いました。
大人にとっては、ワインかウィスキーを楽しみながら味わう絵本のようです。
思春期を迎えるロマンチック世代にお薦め。(ヒラP21さん 50代・千葉県 男の子14歳)
【情報提供・絵本ナビ】