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[BOOKデータベースより]
ヴォルテールとの濃密な学究生活。ニュートンの大理論『プリンキピア』完訳。知と恋と遊を紡いで43年の生涯を燃えるように飛翔したエミリ・デュ・シャトレに捧ぐ!日本エッセイスト・クラブ賞作家入魂の傑作評伝。
第1章 シレー城の愛
[日販商品データベースより]第2章 女の時代にして科学の時代
第3章 運命の再会
第4章 ふたりの隠遁者
第5章 幸せであるためには
第6章 ある従僕の証言
第7章 リュネヴィル城の恋人
ニュートン〈プリンキピア〉を仏訳したフランス最初の女性科学者の生涯を活写。
科学の重い扉をこじ開けた女の熱情的な人生
18世紀フランス、男の牙城の重い扉を力づくで開けて科学界に足を踏み入れた最初の女、それがエミリ(シャトレ侯爵夫人)だった。彼女は、並はずれたエネルギーをもち、何事も中途半端にはできない火のような女だった。愛人ヴォルテールがフランス社会に突きつけた糾弾の書『哲学書簡』の筆禍で投獄の危機にさらされたとき、エミリは彼を辺境のシレー城に匿う。かくして、エミリとヴォルテールの密度の高い学究と執筆の生活がはじまる。
18世紀は、科学の時代にして女の時代であった。地球は宇宙の中心にあるという教会が堅持してきた宇宙観が崩れ去ったことで、天文学ブームがおこり、火星人や水星人の存在について議論が沸騰した。エミリは論文や著作も残しているが、歴史的業績となったのは、ニュートンの『自然哲学の数学的原理』(通称〈プリンキピア〉)をはじめてラテン語からフランス語に翻訳したことである。
当時、宇宙の体系にかんして、フランスの科学界で権威があったのはデカルトの渦動説であり、ニュートンの万有引力説はなかなか受け入れられなかった。ニュートンの大著を翻訳するということは、そこに書かれている命題や定理のすべてを独自に計算しなおし、その正しさを証明することでもあり、現在考えられる翻訳という作業をはるかに超えるものであった。
この仕事が終盤に近づいていたとき、43歳のエミリは再び恋に陥って身ごもり、産褥熱で亡くなった。学究と恋愛、それは彼女を深いところからつき動かし引き裂いていた二つの情熱であり、そして彼女の命を奪ったのも、この二つの情熱であった。