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[BOOKデータベースより]
西欧中世初期の社会経済史研究は近年大きな転換を遂げつつある。カロリング期フランク世界の大所領は古代から中世への社会変動期として、また活発な交易を支えた所領形態として再認識され、同時に市場交易が大きな役割を果たしたことが解明されつつある。本書はこうした動向を踏まえ、アルデンヌ地方、およびパリ周辺に所在する四つの修道院所領を、そこに内包される市場に着目し生産と流通の両面に亙って具体的に再構成する。自給自足的な閉じられたシステムとしてではなく、所領相互・周辺社会との交流を通じて多様な社会階層が垂直的に、さらに複数の地理的単位が空間的に統合されていたカロリング社会の全体像を鮮やかに示し、地中海的古典古代からヨーロッパ中世への移行過程、歴史における連続と断絶をめぐる問いに新たな視座を投げ掛ける。
第1章 文書類から見たスタヴロ・マルメディ修道院の所領空間(所領の骨格;所領の景観と構造 ほか)
第2章 サン・テュベールの市とその周辺(サン・テュベール修道院の初期史;中心地としてのサン・テュベール ほか)
第3章 サン・ジェルマン・デ・プレ修道院所領の生産と流通―所領明細帳を主たる素材として(所領明細帳の概要;生産拠点としてのサン・ジェルマン領 ほか)
第4章 サン・ドニ修道院の所領と市場(サン・ドニ修道院所領における生産活動;所領構造 ほか)
総括 カロリング期の所領経済と市場