- 記憶のポリティックス
-
アメリカ文学における忘却と想起
南雲堂フェニックス
松本昇 松本一裕 行方均(アメリカ文学)- 価格
- 3,300円(本体3,000円+税)
- 発行年月
- 2001年10月
- 判型
- B6
- ISBN
- 9784888962551
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[BOOKデータベースより]
19世紀の末、フランスの文献学者エルネスト・ルナンが『国民とは何か?』と題する名高い講演で、「記憶の共同体である前に、国民とは忘却の共同体なのだ」と指摘した。現在アメリカでは、さまざまなマイノリティのグループが自己文化を主張し、アングロ・サクソン中心の大きな国民国家の物語によって隠蔽されてきた記憶を取り戻そうとして、それぞれの小さな物語を語りはじめている。ただし、このような小さな物語も結局はアメリカという大きな物語にとり込まれるのであり、この大きな物語によって輪郭を与えられてきたアメリカという共同体の記憶のポリティックスから逃れることはできないのではないか?もし逃れられるとすれば、どのようにしてそれは可能か?本書ではこのような問いを導きとして、個々の作家がさまざまな姿で顕現する記憶のポリティックスに対して、どのように「同調」、あるいは「対抗」、あるいは「屈服」してきたかについて論考が企てられている。
第1部 ナショナル・メモリーの創出(エマソンの「透明な眼球」とメモリー―過去との差異を認識する自己;アフリカとアメリカン・ルネッサンスの時代の帝国幻想―ナサニエル・ホーソーン編『アフリカ巡航記』 ほか)
[日販商品データベースより]第2部 ナショナル・メモリーに抗して(神なる父―『ピエール』における記憶の変容;越境する記憶―キャザーの「同じ名のひと」 ほか)
第3部 リメモリー、または帰属意識の再構築(救出される過去―『八月の光』、そして「出会いの前夜」にみる原‐記憶の力;バーナード・マラマッド『フィクサー』と“記憶再生”の構造 ほか)
第4部 トラウマの影(希望としての忘却―『オーギー・マーチの冒険』における忘却の意味について;アメリカン・ホロコースト―ウィリアム・スタイロンの『ソフィーの選択』に見る奴隷捕囚体験記の物語学 ほか)
現在アメリカでは様々なマイノリティが、国家に抑圧されてきた記憶を取り戻すため、それぞれの小さな物語を語り始めている。だが、それらはアメリカという共同体の記憶のポリティクスから逃れることはできるのか。