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まえがきあとがき

今月の作品

蛍の森
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2014年 2月号
石井光太
四国の密林から託された希望

四国の密林の中に、ハンセン病患者たちが身を隠しながら遍路をしていた野道があった―。

この道の存在を知ったのは、民俗学者宮本常一の著作の一文を読んだのがきっかけだった。

かつて日本は国を挙げてハンセン病患者の隔離政策を行っていた。ハンセン病が容易に感染するという誤解をしたまま、警察や保健所の職員にハンセン病患者をつかまえさせ、各地にある療養所に押し込めたのである。

一部のハンセン病患者たちはつかまることを嫌がり、四国の山奥へと逃げた。そして不治の病であったハンセン病の治癒を願い、人目に触れぬように森をかき分けながら、八十八ケ所の札所を回る巡礼をつづけたのである。彼らにとって祈ることが唯一の救いだったのだ。

この実態は長い間明かされてこなかった。ハンセン病患者たちが山中に身を隠していたこと、研究者がその歴史の発掘を躊躇ったことなどが理由だ。文献も皆無に等しい。

だからこそ、この実態を明らかにしたい。私はそう思い、10年以上にわたって断続的に歴史を調べたり、ハンセン病患者を訪ね歩いたりしつづけた。そこで明かされたのは、山中で体の不自由な者たちが生きる過酷さだった。

「山中で見つかって、地元の人間に袋叩きにされて半殺しにされた者もいたらしい。中には誰にも知られないまま殺された人もいたかもしれないね。途中で餓死や凍死した人もいたという話だ」

「遍路をしていた者は何人かのグループで暮らすのが常だった。ボスの命令の元に民家に押し入って盗みをしていた者もいた」

「療養所で女性が孕んだ場合は、堕胎を強制されたものだ。胎児の死体は研究用としてホルマリンの標本にされた。何十年かして胎児の標本が何体も発見されたので、療養所内で焼いて供養した。あとは、ハンセン病患者が解剖された解剖台も見つかったよ」

「療養所には、患者のボスみたいな人間がいた。ハンセン病の女性は少ない。そのため女性が入所してきたら、ボスが誰と結婚しろみたいなことを命令していた。ボスが絶対的な力を持っていたんだ」

四国遍路をしていたハンセン病患者たちの実態も、その後療養所へ連れて行かれた後の生活もほとんど知られていないものばかりだった。

私はこうした話を断片的に、10年以上かけて収集した。そして現代の殺人事件と絡めたミステリとして『蛍の森』を上梓したのである。

蛍の森』は、私がキャリアをかけて書き上げた作品だ。ここには、日本人が知らねばならない国家の過ち、そして彼らから現代に生きる私たちに託された「希望」と「願い」が描かれている。

今、私たちは彼らからどんな希望を背負い、そして何を目指して生きていかなければならないのか。

このミステリを読み終えた時、あなたは涙とともに「生きることの道標」を見つけることになると確信している。

(日販発行:月刊「新刊展望」2014年2月号より)

今月の作品

蛍の森
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石井光太さんにとっての「トクベツな3冊」

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プロフィール

石井光太
石井光太
Kota Ishii
1977年東京生まれ。国内外の貧困、医療、戦争などをテーマに取材、執筆活動を行っている。ドキュメンタリーを主に手がけ、著書に『物乞う仏陀』『神の棄てた裸体』『絶対貧困』『レンタルチャイルド』『地を這う祈り』『飢餓浄土』『遺体』『アジアにこぼれた涙』『津波の墓標』『東京千夜』『世界の美しさをひとつでも多く見つけたい』等多数。『蛍の森』は10年以上の構想を経て着手した、初の小説。

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新刊展望 2014年2月号
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