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特集・対談

著者関連商品

日輪にあらず
いずれ劣らぬ勇将が覇を競う戦国の世。播磨で名を馳せし小寺家に仕える黒田官兵衛は当主政職の蒙昧に失望し、見切りをつける。織田家屈指の知恵者・羽柴秀吉に取り入り、天下統一の宿願を信長に託した。だが本能寺の変が勃発。茫然自失の秀吉に官兵衛は囁きかける。ご運の開け給うときでござる―。秀吉を覇に導き、秀吉から最も怖れられた智将。その野心と悲哀を描く迫真の戦国絵巻
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軍師の挑戦
信長を圧倒していた今川義元は、なぜ、進路を桶狭間に変えた?軍師黒田官兵衛はその真相に慄然とする(「乾坤一擲の裏」)、坂本龍馬を死に追いやった黒幕に勝海舟が迫る(「たみの手燭」)など、歴史上の謎に果敢に挑んだ短編八本。「奥右筆秘帳」で人気街道を走る著者の若き日の魅惑の作品群。
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天主信長 表
奇想の五層の天主閣、安土城を築城し、天下人目前だった信長は、本能寺で腹心光秀の裏切りに遭い、あえない最期を遂げた。「安土城」と「本能寺」―戦国最大の謎に、上田秀人が大胆仮説を引っさげ、挑んだ『天主信長』、待望の文庫化!信長が用意した周到な計画、その驚くべき全貌とは!?信長側から描く“表”版!
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天主信長 裏
天下人へと駆け上がる信長と己は何が違うのか。播磨の小領主の陪臣として、くすぶっていた官兵衛。我が子を信長の人質に差し出し秀吉の傘下に入るも、荒木村重に囚われ、不遇は続く。本能寺の夜、信長が仕掛けた計略の真意をただ一人見抜いた男は大勝負をかけた!黒田官兵衛側から描く“裏”版!
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2014年 1月号

【特集】 黒田官兵衛を読む

2014年NHK大河ドラマの主人公として注目される戦国武将、黒田官兵衛。その生涯をさまざまに描いた小説を中心に、関連本を紹介します。

[エッセイ]上田秀人 │ [ブックレビュー]末國善己 愚者か、天才か、義の人か―官兵衛小説を読む―
[ブックガイド]黒田官兵衛をもっと知るために │ 『軍師官兵衛ぴあ』

上田秀人 Hideto Ueda
1959年大阪府生まれ。大阪歯科大学卒業。現在、大阪府下にて歯科医院を開業。97年に「身代わり吉右衛門」で桃園書房主催第20回小説クラブ新人賞佳作、2010年『孤闘 立花宗茂』で第16回中山義秀文学賞を受賞。主なシリーズに『闕所物奉行 裏帳合』『勘定吟味役異聞』『御広敷用人 大奥記録』『奥右筆秘帳』『妾屋昼兵衛女帳面』『表御番医師診療禄』『将軍家見聞役 元八郎』『織江緋之介見参』、その他著書に『軍師の挑戦』『天主信長 我こそ天下なり』『大奥騒乱 伊賀者同心手控え』『梟の系譜 宇喜多四代』等がある。

 【エッセイ】上田秀人 「イカロスの分身」

黒田官兵衛孝高、今日本で話題第一の武将である。佐々木源氏の流れをくみ近江にあった黒田家は、戦国大名六角氏の勃興で所領を奪われ、備前まで逃げ落ちた。一度は落魄した黒田家を官兵衛の祖父と父が盛り返し、播磨の大名小寺氏の家老となったところで官兵衛が登場、黒田家を歴史に残す活躍をしたのである。

わたしが初めて官兵衛を書いたのは、桶狭間の合戦の謎解きをさせるという小品(講談社文庫『軍師の挑戦』所収「乾坤一擲の裏」)だった。そう、わたしにとって、官兵衛は観察者であり、主人公ではなかったのだ。

観察者とは時代の流れを見つめる役割との意味である。わたしはそれだけの目を官兵衛が持つと観ている。その何よりの証拠が、早くから織田信長の凄さを認識していたことだ。

当時、京に近い播磨は都会、遠い尾張は田舎と認識されていた。信長がどれだけ強くても、尾張の田舎者で、播磨や摂津の大名たちからするとはるかに格下であった。

その信長の力を見抜き、家中で一人毛利ではなく、織田に与くみすべしと官兵衛は主張した。

もっともそのおかげで、後日播磨、摂津の諸将が信長に反抗したとき、官兵衛は孤立、主君小寺政職の罠に落ち、荒木村重に捕らえられるという人生最大の苦難に遭う。

拙著『日輪にあらず 軍師黒田官兵衛』を書いた理由はここにある。わたしは官兵衛を名将ではなく、名将になろうとした人物だとしか思えなかったからだ。

続いて、官兵衛は本能寺の変の報を受けて、呆然自失となった秀吉に天下を取る好機だとささやく。この功績で官兵衛を秀吉の軍師とするが、どうもわたしからすれば、違和感しかない。

その理由の1つが、荒木村重の説得に有岡城へ向かい、捕まってしまった一件である。羽柴秀吉、高山右近ら官兵衛よりもはるかにつきあいの深かった諸将が繰り返し翻意をうながしても効果がなかったところに、信長の直臣でさえない官兵衛が訪ねてどうなるはずもない。可能性は限りなく零に近いことくらい読めたはずだ。官兵衛を捕らえて殺そうとした小寺政職の策とも言われるが、それを見抜けないようではとても軍師たりえまい。

次に、本能寺の変を備中高松城攻めの陣中で聞いた官兵衛の行動である。官兵衛は秀吉をそそのかし、毛利と講和、明智光秀討伐に向かわせる。戦国一の電撃戦、中国大返しを演出するが、このときの一言が秀吉の猜疑心を招き、豊臣天下の間は冷遇される。

「あやつに百万石もやれば天下を取ってしまうわ」こう秀吉が言ったと伝わるのも、官兵衛への警戒心でしかない。たしかに官兵衛が励起しなければ、秀吉の天下統一はなかっただろう。しかし、天下取りを支える軍師として、適切な言葉だったかといえば、疑問が残る。

ただ官兵衛には同情する。なにせ、彼の周りには綺羅星のごとく名将、知将がいた。信長、秀吉、徳川家康はもちろんのこと、希代の軍師竹中半兵衛、梟雄宇喜多直家、叛将明智光秀等々、枚挙にいとまがない。彼らの側にいれば、己もその星の一つになりたいと思うのは当然の行為であろう。だが、その想いは届かなかった。

ゆえに隠居してからのち、関ヶ原の合戦でも官兵衛はあがく。浪人や老兵を率いて九州制圧の戦いを始める。しかし、官兵衛の夢はここでも破れる。1ヶ月はかかると読んだ関ヶ原がわずか1日で決着してしまったからだ。

「そのとき、おまえの右手はなにをしていた」
戦から帰ってきた息子長政が家康の感謝を伝えたとき、官兵衛はなぜそこで家康を殺さなかったのだと叱ったという。わたしはここに官兵衛の無念があると思う。かなわなかった夢、届かなかった日輪へのあこがれこそ、官兵衛の生涯だったのではないだろうか。

(日販発行:月刊「新刊展望」2014年1月号より)

[エッセイ]上田秀人 │ [ブックレビュー]末國善己 愚者か、天才か、義の人か―官兵衛小説を読む―
[ブックガイド]黒田官兵衛をもっと知るために │ 『軍師官兵衛ぴあ』

Web新刊展望は、情報誌「新刊展望」の一部を掲載したものです。

新刊展望 2014年1月号
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