2014年 1月号
植松三十里Midori Uematsu
「男の世界」となりがちな歴史小説において女性(母、妻、娘)の立場や家族の姿を描く作風が持ち味。一方、幕末・鍋島藩で製鉄に挑む熱き男たちの生きざまを活写した最新小説『黒鉄の志士たち』が評判を呼んでいる。そんな植松三十里さんの仕事場は自宅の和室。一家の主婦として家族の世話をしながらの執筆活動だ。冬は“どてら”姿が定番。炬燵でパソコンに向かう。「『黒鉄の志士たち』の読者の方には作品とのギャップが大きすぎるかな。書いたのがこんなおばさんで(笑)」
デビュー10周年。『おばさん四十八歳 小説家になりました』を出版した。いわば「小説家・植松三十里ができるまで」の奮闘記。著者の人柄が垣間見える、ユーモアたっぷりのエッセイ集だ。「歴史小説家志望の方へ」と、自身が小説講座で学んだ極意を惜しげもなく披露していたりもする。「捕物帳や長屋人情ものなどの時代小説に比べて、歴史小説は読むのに少し構えてしまうところがあるかも知れません。でも、ぜひ軽い気持ちで歴史小説に手を伸ばしていただきたいんです」
史料の詰まった本棚と炬燵の間に置いた座椅子が指定席。本棚は向かいの壁面とダイニングルームにもあり、さらに押入れにも史料が。「これ以上増えたら、古本屋さんに引き取りに来てもらわないと」。部屋の一角には、季節ごとの和服を収納した桐箪笥。机上のノートパソコンはキーボード代わりとして使い、「画面が小さくて目が疲れるので」大型モニターを接続し、目から離して置いている。夏季は「エアコンの真下で涼みながら、長椅子に座って脚にノートパソコンを載せて」が執筆スタイル。
(日販発行:月刊「新刊展望」2014年1月号より)
今月の作品
- おばさん四十八歳 小説家になりました
- 新人賞に44回も応募した修業時代、デビューはしたものの2冊目がなかなか出ないあせり、そして新田次郎文学賞受賞。ドタバタ取材行から家族との絆まで。笑いあり涙ありのおばさん小説家奮闘記。
植松三十里さんにとっての「トクベツな3冊」
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