2014年 2月号
薬丸 岳Gaku Yakumaru
仕事場のマンションに毎朝通勤する。「集中するには自宅と別の仕事場が僕には合っているかな。ここに来たら、できるだけ早く家に帰れるよう頑張るんです。居心地が良いと帰りたくなくなるので、適度に不満の残る環境にして(笑)。ただ、締切前は結果的に泊まることも。実際、ここ4日間は缶詰状態です」
『その鏡は嘘をつく』は、ドラマ化された『刑事のまなざし』の夏目信人シリーズ、新作。長編ならではの広がりあるストーリー展開やラストの深い感動が魅力的な1冊だ。ドラマの主要登場人物がひととおり顔を見せるので、ドラマから入った読者にも愉しみは大きい。
デビュー以来、罪と罰という重いテーマに真摯に向き合ってきた。「ミステリーを書く上で僕が武器に出来るものがあるとしたら、それはトリックではなく人間の心です。人の心こそ謎─夏目はその謎を解き明かすのに最良のキャラクターなんです。謎めいていて複雑で、僕自身も彼をわかりきっていないところがあるけれど、夏目のことはこれからも長く書き継いでいきたいと思います」
一方の壁面に、天井近くまである本棚が4本並ぶ。「自宅から運んできていない本もまだありますが」。真ん中の1本には資料がぎっしり。多くは犯罪と刑罰に関する書物だ。机の脇の棚は「あえてたくさん入れないようにしています。圧迫感があるとつらいから」。パソコンの壁紙は愛車(クライスラージープ・パトリオット)の写真。「スティーブ・マックイーンが大好きで」、映画『ブリット』で彼が乗っていた「1968年型フォード・マスタングGT390」のモデルカーが本棚に飾られている。
(日販発行:月刊「新刊展望」2014年2月号より)
今月の作品
- その鏡は嘘をつく
- エリート医師が鏡に囲まれた部屋で自殺。その後、医学部受験を控えたひとりの青年が失踪した。志藤検事は他殺の可能性を見破り、独自に捜査を進める。その頃、夏目刑事は池袋で小さな手がかりを見つめていた…。
薬丸 岳さんにとっての「トクベツな3冊」
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