2014年 2月号
恩田陸著『雪月花黙示録』
映画美術とのコラボレーション!
恩田陸さんは無類の読書家で本が大好きな方です。それゆえ自分の作品に関しても装丁や造本について明確なイメージや希望を出されるときがあります。装丁家を○○さんにしたい、ですとか、実物を例にとりながらこんな本にしたい、ですとか。今回の『雪月花黙示録』では連載中から言っていたことがありました。
「種田陽平さんにお願いしたい」
種田さんと言えば日本の映画美術監督としては第一人者。三谷幸喜さんやチャン・イーモウ、キアヌ・リーブスらが監督した作品も担当しています。ですが、装丁家ではありませんのでブックデザインは未経験。ではなぜ?
『雪月花黙示録』の舞台は近未来の日本。大和文化を信奉する「ミヤコ」と、消費文化が横溢する「帝国主義」というふたつの世界が併存しています。その「ミヤコ」に第三の勢力「伝道者」が宣戦布告。「ミヤコ」の美青年生徒会長やその従姉妹たちが、華麗な日本刀裁きで謎のロボットたちと戦います。恩田さんはさまざまなジャンルの小説を書きますが、今作は「ハイパー・エンターテインメント」と名付けられるような超娯楽作品。スピーディでカラフル、いい意味でのB級でキッチュ、なのです。ここで繋がるのが種田さんが美術監督をした『キル・ビル』でした。日本のようで日本でない、あの美術のニュアンスを『雪月花黙示録』に取り込めたら……。そんな話を連載中から恩田さんと二人でしていました。
いざ種田さんにお願いしてみると本当に忙しいのに快諾のお返事。早速原稿を読んでくれた上で、すぐに「本を刀に見立てて鞘から出すように箱入りに」「カバーはソラリゼーションの極彩色で和風」「別帳扉を多くして映画のスクリーンのように」などなど、アイデアが連発。さらにこの装丁に刺激された恩田さんが小説のラストを変更するという、まさにコラボレーション作業となりました。
お二人の力で、内容も造本もまさに「玉手箱」のような本が出来ました。
(日販発行:月刊「新刊展望」2014年2月号より)
今月の作品
- 雪月花黙示録
- 恩田陸
- 大和文化を信奉する「ミヤコ民」と物質文明に傾倒する「帝国主義者」に二分された近未来の日本。美青年剣士の紫風が生徒会長を務めるミヤコに謎の飛行物体が飛来。それは第3の勢力「伝道者」の宣戦布告だった…。