[BOOKデータベースより]
現代社会の生きづらさにも直結する、「私」をめぐる悩み。宮廷の伝統と葛藤しつつ、自分の人生を貫いた皇妃の「表の顔」と「裏の顔」に、周囲の人々の回想と時代背景から迫る。
第1章 一八三七年の子
第2章 一八四八年の革命
第3章 番狂わせ続きの結婚
第4章 動乱の時代の新皇后
第5章 「美貌」と「療養」による反逆
第6章 新時代の皇妃
第7章 二重の帝国 二重の私
第8章 新たな世界が抱える闇
第9章 反時代的な動き 反時代的な存在
第10章 「私」が消えたその後に
『エリザベート』は毎年のように帝劇や宝塚歌劇で上演される人気の演目であり、いまなおウィーンの象徴的存在である。19世紀のオーストリア帝国を中心としたヨーロッパの政治社会や文化を背景に彼女の生涯をあらためて検証することで、単なる「悲劇の皇妃」にとどまらない人物像を浮き彫りにする。特に詩作や旅の記録を通じ、彼女が同時代から受けた影響、彼女が同時代や後世に与えた影響という双方向的な視点から、新旧の狭間の時代に生きたきわめて多面的な生涯を描き出してゆく。