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[BOOKデータベースより]
原発事故により立ち入りが制限される中、自力で行方不明の家族を捜し続ける―働哭のノンフィクション。―その時問われたのは「ひとりの人間として何をなすべきか」だった。
強震
[日販商品データベースより]押し寄せた津波
家族の行方
バックミラー越しに見た「幸せ」
「人生が終わった」
娘を腕に抱いて
混乱
強制避難
捜索チラシ
緊迫〔ほか〕
原発事故により立ち入りが制限される中、自力で行方不明の家族を捜し続ける。
東京電力の副社長が泣いていた。
2016年2月3日、東京・内幸町の本社応接室。福島の、ある被災者に話が及んだ時だった。「すみません…。上野さんの話をすると、つい込み上げてしまって」。福島復興本社代表を務める石崎芳行副社長(63=当時)は、鼻をすすって息を整えた。「上野さん」とは、上野敬幸さん(44=同)のことだ。南相馬市沿岸部の萱浜(かいばま)地区で農業を営んでいる。その上野さんの話に、副社長はなぜ泣いたのだろうか。
東日本大震災では、津波によって多くの人命が失われた。波にさらわれた子どもや親を、絶望の中で探し続ける人々は少なくなかった。だがそのとき、福島第一原発の事故が立ちはだかる。飛散した放射性物質の汚染のため、自衛隊も警察もやってこず、ただ地元の人々が協力しあって人力で捜索しなければならない地区があった。またあるいは、原発から20キロ圏内の警戒区域に住んでいた者は、家族を探すために地域に立ち入ることすら叶わなかった。彼らの怒りは当然、東電に向いた――。
本書は津波によってさらわれた家族を捜し続ける人々と、そこに加害者として向き合わざるを得ない東京電力の人々に取材したノンフィクションである。被害者ー加害者の関係は厳としてあるが、同時に単純には割り切れない人間と人間の関係も、そこには生まれてくる。震災と原発事故の現場で追った、慟哭の人間ドラマ。
真実を知ることが希望につながる。希望を信じて生きることが失われた命への誠実な祈りとなる。――天童荒太氏(作家)