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[BOOKデータベースより]
町田康×Photograph、一枚の写真が映し出す世界。
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町田康×Photograph
一葉の写真が映し出す世界
まあ、はっきり言ってみんな羨ましがる。いいなあ、なんて言う。でも山羊で人間の手なんていいことはひとつもない。というか面倒くさいことだらけだ。なにが面倒くさいかと言って、日に何度も手を洗わなければならないのがもっとも面倒くさい。通常の山羊の手であれば、地面についていてもなんとも思わない。でもなまじ人間の手をしているものだから、手が泥だらけになっているとなんとなく気分がすっきりしないし、爪の先が黒いのもみっともないと思うから手を洗う。しかし、手は人間でも身体は山羊だからどうしても手をつかないでいることはできない。だから日に何度も手を洗うことになるんだね、これが面倒くさい。あと煩わしいのは、山羊仲間に、僕が指輪をしたり腕時計をしたりして人間ぶっていい気になっている、と批判する者があるということで、いいじゃないかそれくらい。指輪はファンの子に貰ったから嵌めているだけだし、時計は餌の時間とか分かって便利だからしているだけで別に人間ぶっている訳ではない。なのにそんなことをいう山羊がいるというのは悲しいことだと思っていたら、あいつらが来たので塀に手をかけて夕日を見る振りをして鹿十した。山羊十した。……<本文より。山羊談>