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[BOOKデータベースより]
大正時代、フェミニズムを説き、アートを説き、女であることを諦めなかった一人の芸術家がいた。男性中心主義の美術の世界で筆をとり、また10代で参加した『青鞜』誌上では女を愛し、バーや遊郭を見学し、その自由奔放なふるまいから猛烈なバッシングを経験。その後、妻として、三児を育てる母として、社会を見つめ続けた。
第1部 創作―私は太陽をみてゐる(息の動き;浅草から帰へつて(らいてうに);断章5つ;私の命;草と小鳥と魚と神様;貧しき隣人;神さまが腹をたてた話)
第2部 随筆―私は―やっぱり女です(告白;或る夜と、或る朝 ほか)
第3部 評論―新しい女は瞬間である(新しい女は瞬間である;現代婦人画家の群に寄す ほか)
第4部 インタビュー―芽をこぼし飛び散らして(謂ゆる新しき女との対話―尾竹紅吉と一青年;富本一枝先生をおたずねして)
解説(祖母のこと;解説 今日の芸術家としての尾竹紅吉/富本一枝)
大正時代、フェミニズムを説き、アートを説き、女であることを諦めなかった一人の芸術家がいた。
生前に一冊の著書もなく、これまで埋もれてきた「新しい女」初の著作集。
尾竹紅吉(本名・富本一枝)は、1912年青鞜社に入社、雑誌『青鞜』へ表紙絵、詩、随筆を寄稿し、大正時代の開始とともに積極的に活動をはじめた文筆家です。また、12回巽画会展覧会に入賞するなど、その基盤には画家としての素養が深く根付いていました。しかし、女を愛し、バーや遊郭を取材するなど、その自由奔放なふるまいから「新しい女」として世間のバッシングを受け、『青鞜』をわずか9ヶ月で去らざるを得ませんでした。
彼女はその後、自らの絵で得た資金を元手に雑誌『番紅花(さふらん)』を起こしますが、結婚・育児に忙殺される中で自身の執筆より社会や女性運動の支援に回っていくようになります。
それゆえ、研究対象として光を浴びる機会が少なく、優れた文章を多く残しながらも著書は没後に刊行された童話のみでした。
尾竹生誕130周年の今年、時代を先駆け、美術と言葉の領域を力強くとびこえてみせた思考を、詩・小説・エッセイなどその多彩な作品を通して追います。
女性と男性に分けられない性の悩み、
メディアの炎上に焼かれる悔しさ、
田舎で創造的に暮らすこと、
家庭労働のために十分に自分の仕事ができない葛藤、
自分を差し置いて仲間に手を差し伸べること、
そして戦争への流れを止めることができなかったこと……。
一枝が向き合い、苦しんだものごとは、同時代の人々に比べても時代を先駆けていた。
そのことが、彼女を過去よりも現在に近い存在として引き寄せる。(解説より)
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