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[日販商品データベースより]
ふるさとの山の裏側で見た、人間の生死の「本質」――
三十年ぶりに訪れた故郷は、軽便鉄道が廃線となり、たまに見かけるのは老人ばかりだった。事物の本質に迫る、現代に甦る実存主義
……大袈裟なようだが、歴史のある一時期に私が確実に存在し活動したことについて、多勢に無視されまた時の流れにより風化しようとも、「おっこ」と共に生きた記録を通し、残して置かなければ気が済まない。「おっこ」との個人的な体験が人類の行く末を案じる歴史学とは関係がないなら、巷に溢れる本人にとってしか意味のないありふれた個人史ではないかと蔑まれてもいい。
……目の前のそこに在る桜は、今まさに満開だった。地上には一片の花びらも飛び散ってないし、仔細に観察すると蕾【つぼみ】は殆ど開き切った状態だ。咲き切ってなお散りもしない姿は限りなく狭まったひとときしかなく、人は大概見過ごしてしまう。あらためて自問する。人が生きるとは何なのか。それは恐らく本当に恐らく無造作に次々と見逃されてきた一つ一つのものを繋ぎ合わせ、自らの選択を意味付ける作業だといえるかもしれない。
(本文より)