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[日販商品データベースより]
悲しみの終わりには不在があり、
不在の終わりには実在があるのか。
ハン・ガンが3回読んだ名著『朝のピアノ』の著者が、長きにわたって書き溜めていた「愛と不在」の記録。
2018年、ひとりの美学者がこの世を去った。その死後、遺された原稿から見つかった「愛」と「別れ」をめぐるまとまった思索の断片を収録したのが本作だ。
絶筆となった前作『朝のピアノ』で見せた、死の影をも「生の輝き」へと変える透徹した眼差し。その原点ともいえる瑞々しい知性が、息づく。
■時間をかけて熟成された、愛の解読
本書の言葉は、美学者でありながらひとりの人間である著者が、愛と別れを経験し、思考し苦悩した長い時間の集積だ。愛する人がいなくなった後の世界を、あるいは愛そのものの困難を、私たちはどう受け止めるべきか。バルザック、バルト、プルースト、カフカといった古今東西の知の巨匠たちと対話しながら、著者はその答えを自らの感覚で手繰り寄せていく。
■日常という「聖域」に宿る記憶
著者は綴る。
〈戻って顔を洗い横になると、耐えきれない寂しさが押し寄せる。洗顔する間に、何か顔を失ってしまったかのように〉
顔を洗うこと、コーヒーを飲むこと、ただ静かに座っていること。そんな当たり前の日常が、「不在の誰か」と繋がっていく。身体に刻まれた記憶の地層を丁寧に剥がし、言葉という光を当てることで、失われたはずの愛が「実在」として立ち上がる。
■或る美学者が遺した、普遍的な愛のフーガ
複数の旋律が重なり合い、ひとつの音楽を形作る「フーガ」のように、本書に並ぶ断章は、時に孤独を、時に歓喜を奏でながら、読む者を深い静寂へと誘う。
喪失の痛みの中にいる人、愛することの困難に立ちすくむ人、そして言葉の持つ力を信じたい人へ。美学者キム・ジニョンが人生という旅の途上で遺した、祈りのような一冊だ。