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[日販商品データベースより]
「大祖国戦争」と称される第二次大戦時の独ソ戦は、現代ロシアのナショナル・アイデンティティを構成するきわめて大きな要素だ。露宇戦争においても開戦時、プーチン大統領がゼレンスキー政権を「ネオナチ」と名指したのは、その「特別軍事作戦」の正当性を国民の「大祖国戦争」の神話に訴えかけるためであった。「大祖国戦争」の(大文字の)記憶=神話は、戦時からすでに形成されていったものではあるが、しかし、個々人の戦争の経験と記憶は一枚岩のイデオロギーに回収しつくされるものではなく、そもそもそのイデオロギーが形成される過程にもさまざまな政治的・文化的背景があったのは言うまでもない。
本書は、戦中に870日以上の「包囲」を経験したレニングラード(現サンクト・ペテルブルク)を主たる舞台とし、この街の労働者の身体、レニングラード防衛博物館、そして都市の祝典をとりあげながら、国家の公的な「歴史」からは取りこぼされてしまう人々の「大祖国戦争」に対する「応答」の痕跡を掬いとる試みである。過去に生きた人々の営為に対して歴史研究は何ができるのか─傷ついた都市と傷ついた住民と、その復興=回復の「歴史」。