[BOOKデータベースより]
創作への意識、暮しの可笑しみ、家族への想い、文学や日本語のこと―。多様で複雑で加速度的に変化する世界をどう見つめ、何を感じ、どんな言葉を紡いだのか。エッセイ、評論、書評、日記、未発表講演録を収録。平成から令和にかけての足跡を辿る。
無駄にしたくなかった話
1 二〇〇九‐二〇一四(想像力の優位;孔雀の羽模様のサリー;エドウィン・マクレランの追悼文 ほか)
2 二〇一五‐二〇一九(あるフランス人の女中さん;日本より頭の中の方が広いでしょう;したたかで、律儀でも、やはりしたたか ほか)
3 二〇二〇‐二〇二三(センチメンタル・ジャーニー2あるいは、『続 私小説from left to right』;友としたし、吉屋信子;日記 二〇二〇年五月1 ほか)
創作への意識、暮しの可笑しみ、家族への想い、文学や日本語のこと――
多様で複雑で加速度的に変化する世界をどう見つめ、何を感じ、どんな言葉を紡いだのか。
書き下ろし長編エッセイ、評論、書評、日記、未発表講演録を収録した文章集。
平成から令和にかけての足跡を辿る。
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物書きにとって実に貴重な六十代に日本語で書いていなかった――そんな後悔のなかに長いあいだ生きていた私を救ってくれたのが、この『無駄にしたくなかった話』の出版である。「十二年ぶり」の小説(『大使とその妻』)が出たところで新しいエッセイ集を出してもらおうと書棚の上に手を伸ばしてフォルダーを取り出すと、驚くほどさまざまな文章が出てきた。日本語で書いていなかった、日本語で書いていなかった、と口惜しくも悲しくも思っていた歳月に、なんとこれだけ書き残していたのか……。不毛だったと思っていた暗い歳月が突然春の陽の光を受けたようであった。――「はじめに」より