- 司法が原発を止める
-
旬報社
井戸謙一 樋口英明
- 価格
- 1,760円(本体1,600円+税)
- 発行年月
- 2025年06月
- 判型
- 四六判
- ISBN
- 9784845121038

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[BOOKデータベースより]
「裁判官は事件を裁くことによって自らが裁かれる」との覚悟と、「この判決を出せたら、僕はもうそれで死んでもいい」との思いで、原発の運転差し止め判決を言い渡した二人の裁判官が語りつくす。
第一章 二つの判決(志賀原発の運転差し止めと大飯原発の運転差し止め;原発訴訟担当裁判官を集めての二〇一三年「協議会」 ほか)
[日販商品データベースより]第二章 知られざる裁判官の仕事(新人裁判官時代の思い出;裁判官の窮状 ほか)
第三章 どうして原発を止めなければいけないのか(原発を止めなければいけない理由・その1;帰還困難区域は名古屋市と同じ広さ ほか)
第四章 裁判官の可能性と覚悟(福島第一原発事故賠償訴訟における裁判官の態度;最高裁人事の問題 ほか)
裁判官の責任とは、矜持とは!? 「裁判官は事件を裁くことによって自らが裁かれる」との覚悟と、「この判決を出せたら、僕はもうそれで死んでもいい」との思いで、原発の運転差し止め判決を言い渡した二人の裁判官が語りつくす。
*
3.11福島第一原発の事故以前に、原発の運転差止めの判決を言い渡した井戸氏と、福島原発事故後に原発の運転差止め判決、原発再稼働差し止め仮処分の判決を言い渡した樋口氏という、二人の元裁判官の対談。
◎内容紹介
日本の裁判官のありようについては、社会の各層から様々な批判がなされている。「ヒラメ裁判官」(市民を見ないで、上、すなわち最高裁ばかりを見ているという趣旨)、「事なかれ主義」「国策に抵抗できない」云々。私は、裁判官のOBとして、これらの批判を否定できないことを悲しく思う。しかし、裁判官の具体的な事件処理について圧力がかかることは、外部からも内部からも、私が経験した限りでは、ない。裁判官も人の子であり、任地、ポスト、給与を最高裁が一元的に支配するという現在のキャリアシステムは、裁判官が自由に仕事をすることの足かせにはなっているが、裁判官が独立の矜持さえ持てば、法律と良心に従って仕事をすることができる。その環境は維持されている。
市民が裁判所の高い壁を感じている訴訟類型の一つが原子力発電所の運転差止め請求訴訟であろう。私は、福島原発事故前の2006年3月、金沢地裁裁判長として、北陸電力志賀原子力発電所2号機の運転を差し止める判決を言い渡し、樋口さんは、福島原発事故から3年後の2014年5月、福井地裁裁判長として、関西電力大飯原子力発電所3、4号機の運転を差し止める判決を言い渡した。福島原発事故後の最初の運転差止め判決だった。その判決文は、わかりやすく、格調が高く、「樋口判決」として市民の感動を呼んだ。
私と樋口さんは、ほぼ同世代であるが、現役裁判官時代、ほとんど接点がなかった。私は、全国裁判官懇話会等、裁判官の統制に抵抗する裁判官運動に加わり、その末席を汚してきた。他方、樋口さんは、そのような裁判官の運動とは一線を画し、職人肌の裁判官として裁判官生活を全うされた。そのような二人が、原子力発電所の運転差止めを命じた数少ない元裁判長として接点を持つことになった。
樋口さんとの長時間にわたる対談は、刺激的なものであった。官僚制が完成形にあると思われる今の日本の裁判官の世界で、それでも自らの自由を保って裁判官の仕事に取り組もうとした樋口さんと私のアプローチは、方法は違うけれども、裁判官の世界に触れることのできない市民の人たちには、興味深く受け止めていただけるのではないだろうか。そして、私は、事件処理に追われる厳しい裁判官生活の中でも自分なりのやり方で、あるべき裁判官像を追求しようとした先輩がいたことを、是非、現役の裁判官の皆さんに知ってほしいと思う。(「はじめに」より)