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[BOOKデータベースより]
運命に立ち向かい、絆を紡ぐ犬の奇跡―。極寒の地シベリアで苦難を乗り越え懸命に生き抜いた日本人抑留者たちに勇気と希望を与え続けた実話。
[日販商品データベースより]ベスト&ロングセラー
「兵隊さんに愛されたヒョウのハチ」と「洞窟少年と犬のシロ」の祓川学が放つ感動童話・最新作!!
運命に立ち向かい、絆を紡ぐ犬の奇跡ー
極寒の地シベリアで苦難を乗り越え懸命に生き抜いた
日本人抑留者たちに勇気と希望を与え続けた実話。
凍える寒さと心の温かさが交錯するー
心打つ感動物語!
祖国・日本に帰国する日。
港に残されたクロと日本人を乗せた船は厚い氷の海で隔たれていたー。
「クロ、頼むから静かにしろ。ソ連兵に見つかったらやっかいなことになる」
川口さんは寝床でクロを抱きながら、頭をなでてあやし続けていました。
ソ連兵たちが行なう週一回、バラックの持ち物の検査中でした。
「ナンデ イヌガ イル?」
ソ連兵はクロを発見してしまいました。捕まえようと追いかけ回しますが、バラック内のベッドや廊下を走り回り、
すばしっこくて、とらえることができません。
「クロ、いいぞ。逃げろ、逃げろ」
(本文より)
昭和三十一年(一九五六)十二月二十二日、早朝。
日本人が最後といわれるシベリアの抑留者たちはハバロフスク強制収容所を出発し、
トラックでハバロフスク駅へ向かいます。車に揺られながら抑留者たちは胸のあたりが早い音を立てているのを感じていました。
《本当に日本に帰れるのだろうか》
《また別の強制収容所へ送られることはないか》
《ダモイというが、だまされていないか》
誰もが口に出しませんが、心の中で不安が大きくふくらむばかりでした。
(本文より)