[BOOKデータベースより]
「他者」への理解、他者との「共生」に必要な手がかりを探る。
序章 かかわりあいの人類学の射程 他者とかかわること―人類学者の実践から学ぶ
第1部 かかわりあいの作法(社会人になるためのフィールドワーク―人類学の院生がベトナムの農村でかかわりあいの作法を学んだはなし;「かかわりあい」における酒飲み、「かかわりあい」としての酒飲み―中国の「酒の場」から人間関係を考える;理性と感情―ベトナムの漁村における韓国人人類学者の経験から ほか)
第2部 かかわることのディレンマと矛盾(しがらみの人類学;人脈を辿って「紛争空間」を渡り歩く―ミャンマー内戦に巻き込まれた人びとの越境的ネットワーク;戸惑いの帰趨―観光開発とのかかわりあいから考える ほか)
第3部 かかわることから生成するもの(グローバル化する世界においてかかわりあうこと―日本への出稼ぎミャンマー人と私との生活経験の共有しそこない;何気ないかかわりあい―ハラレとヨハネスブルグにおけるフィールドワークの経験から;フィールドにおける相互期待の交錯―ソロモン諸島での共同生活から思考する人類学者と現地住民との「かかわりあい」 ほか)
終章 不確かな世界で生きること
フィールドワークの極意と真髄とは何か。「他者」への理解、他者との「共生」に必要な手がかりを探る。――
人類学の基本はフィールドワークである。それは、自己とは文化・社会的背景の異なる「他者」と長期間接することによって、他者を深く理解する「かかわりあい」の営みである。人類学にとって「かかわりあい」は、研究に必要な一次資料を集めるためのたんなる手段ではなく、他者との相互作用であり、その過程で自己も他者も変容していく。また、かかわりあいの道程はけっして平坦なものではなく、煩わしさ、誤解や葛藤に満ちている。研究対象との個人的なかかわりを回避して科学的な客観性を保とうとする他の人文学・社会科学と人類学は、この点で大きく異なっている。
しかし、人類学にとって本質的に重要な営みであるにもかかわらず、「かかわりあい」はこれまで研究テーマとして主題化されることは少なかった。本書は、「かかわりあい」が持つ学問的な意義とは何かを正面から問う、日本語では最初の人類学の書籍である。日本を含む世界各地で実施したフィールドワークの過程で、他者とどうかかわったのか、それは自己と他者にとっていかなる経験であったのかを、具体的かつ批判的・自省的に考察し、フィールドワークにおける、そして人類学における学びや気づき、そして発見を伝授する。
かかわりあいは、人類学だけに限定される課題ではない。すべての人間は、他者とのかかわりあいの中で日常生活を送っている。個人の孤立や、人間同士のつながりの希薄化が問題となっている一方で、多様な他者を包摂することが求められている現代社会において、自己が属する社会とは空間的にも心理的にも遠く離れた社会に自ら進んでおもむき、他者とのかかわりあいを求める人類学者のあり方は、普遍的な意味合いを持っている。
人類学とはなにかを学ぶことができる教科書として、また、異文化理解・多様な他者との共生を考えるための実践的な入門書として最適の1冊。
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