- 絵の幸福
-
シタラトモアキ論
みすず書房
秋庭史典
- 価格
- 4,400円(本体4,000円+税)
- 発行年月
- 2020年09月
- 判型
- A5
- ISBN
- 9784622089322
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[BOOKデータベースより]
自分を自分として生きるという希望、すなわち「自由」。絵をかくとは何かがわからなくなった画家の回復、生きのびるためのヒント。
1 絵を描くことがわからなくなった画家(生きるために;絵が生き続けるために;絵を生き続けさせるものたち;絵の幸せ)
[日販商品データベースより]2 シタラと学生の対話(“大きな私と小さな私”;“片腕ノ私ガ手ヲ洗オウトスル”;タイトルをつけるということ;線でかくことについて思うこと;白土舎の個展;“透明壁画―人工夢”;凸と凹の絵;“ロボットになって街を歩いた”;“母の炎”“ピアニカ・ガール”;“胴切り”“空穴”“クピドの現われる街”“曇空二穴ノ空イテイル絵”;“ホテル・パシフィカ”;「五十年分の光の映画」(芸術祭のパンフレットの挨拶文)より;“二つ折りにして封筒にいれました 手紙”;“鏡”“鏡ヨリモノタイプ”;“モレスキンの大きなノート”)
幼少時から「息をするように絵をかいてきた」画家・設楽知昭は、ある時、絵をかくとはどういうことかがわからなくなった。ぐにゃぐにゃになり、血みどろになり、言いよどみながら、生や死という、人間であればだれもが対峙するものと向き合う画家。そのリハビリテーションの試みを、美学研究者が追った。
著者が画家を観察しつつ、芸術制作をみる基礎においたのは、ギリシア語の「中動態」すなわち能動/受動、主体/客体の対立とは別の考え方だ。
見ることとかくことが直結して反転するよう、鏡に指で描いて写し取る。等身大の人形を吊ってポリエステルフィルムにトレースをする「人間写真機」。透過光と反射光の原理。人工夢―透明壁画。二つ折り。雲と穴。模型。妄想をかくのでなく、かくこと自体が妄想であった大きなノート。
いつしか絵とそうでないものとの区別が働かなくなり、力の抜けた「無為の場」が現れる。絵をかきながら、そんな〈仕組みをつくる〉こと。自分を自分として生きるという希望、すなわち「自由」。
画家は愛知県立芸術大学教授として長年、学生の教育にも尽力してきた。学生と対話し、技法やアイデアの練り方を語っている。画家にとっての幸せとは、人が幸せに生きるとは。論考・対話・画集を一冊にした美しい本。