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[BOOKデータベースより]
妖しい色の12の世界。
[日販商品データベースより]妖しい色の12の世界
緑色がかった薄青の絹のショールをふわりと掛け、うなじにかかったほつれ毛を白い指でかきあげていた伯母の琴乃を思い出した時、笙子は伯父の膝にのせられてた小学校5年の自分をも思い出していた。両手が笙子の腹部で組み合わされていて、お尻をわずかに動かすと、伯父の太股がびくんとした。今は分らないでもそのうち分る。肉桂(にっけい)や伽羅(きゃら)の香木で染めた掛け襟は香色(こういろ)、でもちょっと焦げた色が加わると誰かに恋焦がれている焦香(こがれこう)。そして吐息は「秘色(ひそく)」。
すべての色には名前と女の性(さが)、そして人生がある。小気味よい文体で紡ぎだした佳作集。
(中部ペンクラブ会長・三田村博史)