- 好古趣味の歴史
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江戸東京からたどる
文学通信 八木書店
法政大学江戸東京研究センター 小林ふみ子 中丸宣明- 価格
- 3,080円(本体2,800円+税)
- 発行年月
- 2020年06月
- 判型
- A5
- ISBN
- 9784909658296
[BOOKデータベースより]
人はなぜ過去の記憶を調べ、探し、記録するのか。アイデンティティの確認として、作品世界の羅針盤として、新たな創作の起源として―さまざまな地名から、巷の物売り、名物、芸能・芝居、年中行事まで、往時の事物をめぐるスリリングな知的探究から、ひと昔前の慕わしい江戸の土地と暮らしのすがたが浮かび上がる。江戸、そして東京から好古の営みの歴史を繙く。
1 知識を集め地理をひもとく(江戸の歴史のたどり方―考証の先達、瀬名貞雄・大久保忠寄と大田南畝;「長禄江戸図」と馬琴の地理考証―「神宮」をめぐる混乱;〓外歴史文学の“江戸”像―時間・空間の語り方に注目して)
2 風俗や慣習の由来を探る(新興都市江戸の事物起源辞典―菊岡沾凉『本朝世事談綺』;七兵衛という飴売り―柳亭種彦の考証随筆『還魂紙料』;失われた端午の節句「印地打」―日本人と朝鮮人のまなざしから考証する)
3 盛時の歌舞伎と遊里の面影を求めて(古画を模す―京伝の草双紙と元禄歌舞伎;古画の収集と考証―京伝読本の発想源)
4 響き続ける江戸(受け継がれた江戸―高畠藍泉の考証随筆;「趣味」(Taste)とは何か―近代の「好古」;江戸漢詩の名所詠と永井荷風;“江戸”をつくりあげた石川淳)
人はなぜ過去の記録を調べ、探し、記録するのか。
江戸の人たちは、地名や風俗、慣習、年中行事まで、往事の事物を探究し、ひと昔前の江戸の土地と暮らしのすがたを克明に調べあげ、
書き残した。それは何のためか。なぜ人はいにしえのものに惹かれてしまうのか。
アイデンティティの確認として、作品世界の羅針盤として、新たな創作の起源として、過去の記憶は人々の生活に息づくようになるのである。
江戸、そして東京から好古の営みの歴史を繙いていく書。
執筆は、小林ふみ子・中丸宣明・神田正行・出口智之・大塚美保・真島 望・佐藤 悟・金 美眞・有澤知世・阿美古理恵・稲葉有祐・多田蔵人・合山林太郎・関口雄士。
【災害の多い日本列島で、この都市は、大地震や洪水、高潮にたびたび見舞われただけでなく、海外の大都市に較べると、木造建築が圧倒的多数を占めたために火災に対しても脆弱であった。しかも、さきに記したように歴史が比較的浅く、残すべきモノゴトが数百年のうちに集中していた。そのなかで記録、記憶・口碑、また残された事物を最大限に活用し、風俗や慣習に至るまですべてを書きとめ、あるいは再現しようとし、またそれらを生かして新たな世界を築きあげようとした、それが江戸東京流の記憶のとどめ方であったのではないか─そんな見通しのもとに本書を読みすすめていただきたい】はじめにより