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[BOOKデータベースより]
森田療法と三聖病院
[日販商品データベースより]第1章 宇佐晋一講話集「しゃべる人は治りません」(森田療法から見た精神分析の百年;モノを言わない体験 ほか)
第2章 宇佐晋一講話集「心に用事なし」(心・この決められないもの;心に拠りどころなし―森田療法三十年 ほか)
第3章 宇佐晋一講話集「無条件幸福」(治ればもと以上―とらわれからの脱皮の実際;わかって治ることはない ほか)
第4章 宇佐晋一講話集「わからずにいる」(迷いの科学と科学の迷い;森田療法と美の問題 ほか)
森田療法は、今から100年ほど前に東京慈恵会医科大学精神医学講座教授、森田正馬により生み出された、「あるがまま」に生きることによって、恐怖症や強迫神経症等が治癒していくという治療法です。本書は、森田療法を専門に扱う元・三聖病院二代目院長、宇佐晋一氏の講演、講話を中心に、元・日経新聞記者、木下勇作氏によってまとめられた既刊『あるがままの世界』『続あるがままの世界』『とらわれからの解脱』を合本した完全版です。
『あるがままの世界 ─完全版─』は、過去に上梓された森田療法本の三冊合本、それぞれの時代背景も異なることから、校閲作業は時制や表現の見直しも含めて、なかなかの骨折りだった。森田療法の対象となる病態・森田神経質の症状は、人間の心が絶えず変化する無常の状態であるため、そこにこだわりを持ってしまうと、全治から遠のいてしまう。症状に知的やりくり・計らいをして逆に悪化させるのなら、それをやめて気持ちを大きく持てばいいと思われがちだが、それも誤りである。なぜなら、その考えそのものが新たな知的なやりくりとなり、神経質のとらわれが続いて全治につながらないからだ。本当の全治は、骨折りという行動によって、神経質を意識の外に追いやるという言葉に頼らない方法をとらねばならない。本書では、その一つの真実を角度を変えて何度も説明するため、一度通読するだけでも大きな理解が得られるのが特色だ。さて自分は、宇佐玄雄先生のはるか歳の離れた後輩でもあり、しかも同じ東洋哲学を専攻したにもかかわらず、宇佐先生の仏教より、道教(道家思想)の方に興味を持ってしまい、そちらをもっぱら研究した。しかしそれでも、禅などの仏教と深くかかわる森田療法の理解は非常に早かったかもしれない。というのも、森田療法の知的やりくり・計らいが逆に完治を遅らせるという論法には、全く違和感を覚えることなく、むしろ道家的であるとさえ感じたためだ。森田療法の全治におけるこの逆説に、自分は一瞬にして、荘子の「万物斉同論」を想起させていた。荘子は、「道」の下においては、人間が日々論じ合っているものは、その全てが同一なものに過ぎないと断じ、「道」に近づくには、そういった概念・分別、言葉による議論は意味を持たず、超越していかねばならないと説いているのだが、これはまさに森田療法に通じるところではないか。そもそも臨済宗など禅宗は中国仏教の要素を多分に取り込んで形成されている。そしてその中国仏教はインド仏教に儒教や道教を取り込みながら成立した経緯がある。中国仏教を取り込んだ禅宗が荘子の万物斉同論の要素を併せて取り込んだと考えても、何ら不思議ではないし、その禅宗の影響を多大に受ける森田療法が荘子の「万物斉同論」のように思えてしまうのは、もはや偶然ではなかろう。本書はこれからの世代も読むことを想定し、極力読みやすいよう、校閲に腐心したつもりである。「新たな誤植はないか」などと知的やりくりを働かせず、純なる心で愛読して下されば、無上の喜びである。
校閲:中野龍三