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- 近代ヒスパニック世界と文書ネットワーク
-
- 価格
- 3,960円(本体3,600円+税)
- 発行年月
- 2019年04月
- 判型
- A5
- ISBN
- 9784865820355
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[BOOKデータベースより]
“文書主義”が、スペイン植民地帝国を作り上げた原動力だった!マドリードの王宮から、新大陸およびフィリピンの植民地の最末端にいたるまで、二つの大洋を跨いで縦横に行き交った膨大な文書群をさまざまな角度から読み解き、スペイン帝国形成の原動力を究明。
序 「近代ヒスパニック世界と文書ネットワーク」の構想と課題
[日販商品データベースより]第1部 文書循環サイクルの成立過程(スペイン帝国の植民地統治と文書―中央アメリカのチアパス地方王庫(1540〜1549)を事例として;スペイン帝国の文書ネットワーク・システムとフィリピン―インディアス総合文書館所蔵フィリピン総督文書の検討;検索可能なアーカイブの構築―スペイン異端審問の文書管理;イエズス会のグローバルな文書ネットワーク・システム―スペイン領南米パラグアイ管区の「年報」を中心に)
第2部 文書の物質的諸相(紙の上の集住化―イエズス会ペルー管区モホス地方の洗礼簿の分析;植民地都市ラパスにおける公証人の文書作成術と公証人マニュアルの影響;テンプル/聖ヨハネ騎士団カルチュレールと文書管理―生成・機能分化・時間)
第3部 帝国周辺社会における文書ダイナミズムの実相(有力入植者と王権をつないだ文書―初期メキシコ植民地の事例から;植民地時代メキシコ中央部の先住民村落における「権原証書」(t´itulos primordiales)の作成と使用;先住民の文書利用―17世紀ペルー・ワマンガの公正証書の分析を通じて;スペイン領メキシコにおける簿記行為―シモン・バエスの帳簿を中心に)
第4部 研究者の集合知(近代ヒスパニック世界における文書ネットワーク・システムの成立と展開―共同研究の集合知の可視化の試み)
付論 「集合知の可視化プロジェクト」に対する編集からのコメント
15世紀末以降、アジアからアメリカに至る広大な領域を支配下に治めたスペイン帝国を支えた膨大な文書群。大西洋、太平洋、インド洋を縦横に行きかった膨大な文書ネットワークシステムの具体的な分析により、スペイン帝国の世界統治の実態に迫る。〓
…15世紀末以降、アメリカ大陸「発見」を契機に海外征服・植民地化事業に乗り出したスペイン帝国の統治原理は、「文書主義」の優越というイデオロギー―口頭伝達よりも文書を介したコミュニケーションを重視し、「文書への信頼」に基づいて人間関係の在り方や社会の仕組みを支えようとする心性ーによって支えられていた。マドリード王宮の発する命令書簡から、インディアス(新大陸およびフィリピンのスペイン領植民地)の最末端で作成された先住民請願書に至るまで、さまざまな文書が無数に行き交い、二つの大洋をまたいで縦横に横断し、大陸間を接続する壮大な文書ネットワークが展開された。ネットワークの網の目に沿って、植民地経営の実務を支えるヒトやモノ、情報の流れが構造化され、領域の隅々にまで拡張されることで、近代初期ヨーロッパで類をみない規模の世界帝国を支えた統治機構の礎が整備されていったのである。本書は、多面的かつ複雑な、スペイン帝国の文書主義の実態について、スペイン、ラテンアメリカ、アジア各地での実地調査を通じて史料分析の研鑽を積んだエキスパートたちの知見を総合し、中世までヨーロッパの一辺境にすぎなかったスペイン王国を世界規模の一大帝国へと押し上げた原動力について、文書研究の視座から究明することを主な目的とする。
第1章は植民地財政の管理統制のためにスペイン領アメリカに導入した財務監査制度の役割と、文書を媒介とした中枢/周縁関係の成り立ちを、第2章はフィリピン総督府とスペイン王室間の行政通信文書から文書流通の全体像を明らかにする。第3章は近代初期ヨーロッパ最大規模ともいわれるスペイン異端審問の巨大アーカイブズシステムの歴史的過程を、情報検索インデックスの変遷から分析。第4章はイエズス会南米パラグアイ管区での「年報」の流通・保管プロセスを、第5章はモホス地方のイエズス会ミッションで作成された洗礼簿の形態変化から、集住化の二重プロセスの実相を明らかにする。第6章はラパスの公証人作成の売買契約証書と公証人マニュアルの書式見本とを比較し本国との間で築かれた歴史的関係を論じ、第7章はテンプル/聖ヨハネ騎士団編纂のカルチュレールを検証し機能分化論的アプローチを提起する。第8章はメキシコ市の有力エンコメンデーロであったインファンテ家とインディアス諮問会議との100年余の文書応答プロセスを、第9章は植民地期中期、メキシコ中部ナワトル系先住民による土地文書群の歴史的生成プロセスを、第10章は17 世紀ペルー副王領ワマンガでの公正証書を分析し、スペイン征服以降導入された公証人制度の利用実態を、第11章は17世紀メキシコの商業帳簿から帝国行政と植民地商人の関係性を明らかにする。第12章は本共同研究での文書実践を分析し、集合知の形成を人文情報学的な手法を用いて可視化する。