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[BOOKデータベースより]
序章 インドにおける公共サービス―本書の目的と背景
[日販商品データベースより]第1章 岐路に立つ公共配給制度
第2章 インドにおける医薬品供給サービス
第3章 インドにおける生活用水の供給
第4章 インドにおける都市ごみ処理
第5章 公立校における義務教育―基礎教育普遍化と私立校台頭のはざまで
第6章 乳幼児の保育と教育をめぐる取組み
第7章 公益訴訟の展開と公共サービス
本書は、インドの公共サービス(public service)に関する基礎的な情報を研究者やビジネス・パースン、援助実務家、学生といった読者に提供し、公共サービスの特定分野や関連分野についての調査や研究などそれぞれのニーズに役立てていただくことを目的としている。近年、経済成長著しいインドと日本の交流は、従来からの援助の分野だけでなく、学術やビジネス、文化などさまざまな領域で深まっており、貧困、カースト、IT、数学といったインドに対する断片的なイメージからより踏み込んでインド社会を理解する必要が高まっていると考えられる。とくに、公共サービスに含まれるさまざまな分野は、膨大な貧困層を含むインドに生きる人々の暮らしを知るためにも、またインドの経済のみならず政治や社会の今後の変化を占ううえでも重要であると考えられ、本書は、その現状を探るための案内書として、全体としてあるいは関心ごとに、読者が参照できるように企図している。
本書は、インドの公共サービスに絞って光をあてる。公共サービスには人々の暮らしの基盤となるもの、また中長期的な経済発展の礎となるようなものが少なくない。とくに、上にふれたように、いまだ 58%、すなわち7億人余りにも及ぶ貧困層の暮らしにおいて、食糧や飲料水、医薬品、教育などの公共サービスがどう利用できるか(できないか)、都市ごみ処理などの公共サービスが経済活動の活発化に応じてきちんと整備されてきているかは、日々の生活に深くかかわる問題である。それゆえ、インドにおける社会経済の変化を公共サービスに注目して検討することは、その過去、現在、将来を立体的に理解するための一助となると考えられ、そのような観点から、本書は、インドの社会経済の今後を考える上で重要な領域に関する視点や視角を、読者に提供することをめざしている。具体的には、インドの公共サービス一般、あるいは特定の公共サービスについて情報を必要とする研究者やビジネス・パースン、援助実務家、学生などの読者に、調査や研究を進める上で必要と考えられる制度や事件、その歴史的経緯などについての情報を整理し提供しようと試みている。また、今後、有望かつ巨大な消費市場として、あるいは生産拠点としてインドの経済成長が注目されているという現状に対して、実際のところインドに生きる人々はどのような条件のなかで暮らしているのか、経済成長の果実は貧困層にまで及んでいるのかといったより一般的な問題に関心をもつ読者にも、さまざまな公共サービスという切り口から、インド社会の現状を垣間見ることができるよう、なるべくわかりやすい解説を展開するよう努力している。